旅行業界に将来携わりたいと思っている方にとって目にする機会が多い「旅行業務取扱管理者資格」。旅行関係の資格ということは分かりますが、
と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか?
旅行業務取扱管理者とは、旅行会社で旅行商品を販売するために必要な国家資格です。旅行会社の各営業所には1名以上の旅行業務取扱管理者を配置することが法律で義務付けられています。この資格がなくても旅行業界に就職することはできますが、このような理由から、旅行会社に勤めている人の多くが取得しています。
また、資格を持っていると、
- 旅行会社の就職に役に立つ
- 自身のスキルアップやキャリアアップに繋がる
などのメリットも生じます。そのため、旅行会社への就職を目指すなら、ぜひ取得しておきたい資格と言えるでしょう。
しかし、旅行業務取扱管理者は簡単に取得できる資格というわけではないため、それなりの準備が必要です。事前に受験のポイントをおさえておくことが合格のカギになります。
そこで今回は、みなさんが資格取得に向けて準備ができるよう、
- 旅行業務取扱管理者資格の概要
- 旅行業務取扱管理者試験の出題傾向
- 旅行業務取扱管理者試験の勉強法
について詳しく解説していきます。全く予備知識がないという方でも、この記事を読めば旅行業務取扱管理者資格の取得にグッと近づきます。ぜひ、最後まで読んでご自身のスキルアップやキャリア形成に役立ててください。
目次
1.旅行業務取扱管理者とは
1-1.旅行業務取扱管理者には国内?総合?地域限定の3種類の資格がある
旅行業務取扱管理者は旅行業界唯一の国家資格です。旅行業法という法律では、旅行会社が旅行商品を販売する際、各営業所に1名以上の旅行業務取扱管理者を配置しなければならないと定められています。つまり、旅行商品販売の責任者とみなされる資格です。旅行会社にとっては、少なくとも営業所の数だけ旅行業務取扱管理者資格の保有者が必要です。
この資格には以下の3種類があります。
これらの資格の大きな違いは、販売できる旅行商品の範囲が異なるということです。
(1)国内旅行業務取扱管理者
国内旅行商品のみを取り扱える資格です。
(2)総合旅行業務取扱管理者(海外)
国内旅行商品に加えて海外旅行商品も取り扱える資格です。この3つの中では最も出題範囲が広く、難易度の高い資格と言えます。
(3)地域限定旅行業務取扱管理者
営業所のある市町村、隣接する市町村、観光庁長官の定める特定の地域の旅行商品のみを取り扱える資格です。
受験に条件や制限はなく、誰でも好きな試験から受けられますが、先に国内旅行業務管理者資格を取り、翌年に総合旅行業務取扱管理者試験を受ける人が多い傾向です。
取得のために学校に通ったり、通信教育を受けたりする方法もありますが、独学で合格することも決して不可能というわけではありません。
1-2.旅行業務取扱管理者資格を取得するメリット
旅行業務取扱管理者資格を取得することで、主に以下の3つのメリットがあります。
それぞれ詳しく解説していきます。
(1)旅行会社の就職に役に立つ
旅行業界唯一の国家資格のため、旅行業界を目指している人にとっては、自分をアピールするのにうってつけの資格です。資格保有者は「旅行業に関して必要な知識を持っている」とみなされ、旅行業界への就職や転職の際に有利になるでしょう。
また、旅行会社の新卒採用では、旅行業務取扱管理者資格を持っている応募者は多くはないため、学生のうちに取得できれば他の就活生との差別化が図れます。
(2)自身のスキルアップやキャリアアップに繋がる
すでに旅行会社で働いている人にもメリットはあります。
前述したように、旅行業務取扱管理者は旅行商品販売の責任者とみなされる資格です。資格を持っていると会社内で扱える業務の範囲が格段に広がり、様々な仕事を任される可能性があるため、スキルアップに繋がります。支店長クラスに昇進するためには旅行業務取扱管理者資格が必要と言われているため、キャリアアップにも必須の資格です。
また、会社によっては、資格を取得していると資格手当がもらえる場合もあります。例えば、株式会社ユーラシア旅行社では、総合旅行業務取扱管理者資格の保有者には月額10,000円の手当が支給されます。
待遇
諸手当(月額)
?総合旅行業務取扱管理者資格手当:10,000円
月1万円×12か月で年収が12万円アップすると考えると、取得するメリットは大きいといえます。
いずれにしても、旅行業界でスキルアップやキャリアアップを目指すのであれば取得しておくべきでしょう。
(3)旅行会社を起業できる(旅行商品を販売できる)ようになる
旅行業務取扱管理者の資格があれば、旅行会社を起業することができます。あまり現実的ではないと思うかもしれませんが、旅行会社で経験を積んで独立すれば、自分で好きなツアーを企画して販売することができます。将来の選択肢を広げるためにも、取得しておいて損はない資格です。
※ただし、旅行会社を設立する際にはある程度のまとまった資金と経験が必要になるため、社会経験を積まずにいきなり起業するのは難しいでしょう。
その他のメリット:「全国通訳案内士試験」の地理科目が免除になる
旅行業務取扱管理者資格の保有者は、全国通訳案内士試験を受ける際、一次試験5科目のうち「日本地理」が免除されます。全国通訳案内士試験は科目数が多いため、1科目でも免除科目されるのは大きなメリットです。
全国通訳案内士試験についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。
2.旅行業務取扱管理者試験の概要
「国内旅行業務取扱管理者試験」と「総合旅行業務取扱管理者試験」のそれぞれの特徴を以下の表でまとめました。
※1 正式名称から省略して記載しています。
※2 受験手数料は非課税です。
2-1.試験内容
国内旅行業務取扱管理者試験
マークシート形式で試験時間は120分です。試験科目は以下の3科目です。
- 旅行業法及びこれに基づく命令(25問100点)
- 旅行業約款、運送約款及び宿泊約款(25問100点)
- 国内旅行実務(38問100点)
(1)旅行業法及びこれに基づく命令
旅行業の登録、旅行管理業務、広告や取引内容の交付などの法令や命令について出題されます。
(2)旅行業約款、運送約款及び宿泊約款
契約の締結や解除、旅行会社の基本的な義務、旅行会社が持つ権利などについて出題されます。旅行業約款とは、お客様と旅行会社との約束事のことです。
(3)国内旅行実務
「JR?バス?フェリーなどの運賃(料金)計算」と「国内観光地理」に分かれます。数字を多く扱うので、この部分を苦手とする人も少なくありません。
それぞれの問題の出題傾向については、3章「旅行業務取扱管理者試験の過去問から見る問題傾向」で詳しく解説します。
総合旅行業務取扱管理者試験
マークシート形式で、以下の4科目に分かれています。試験時間は(1)と(2)で80分、(3)と(4)で120分の、計200分という長い試験です(間に昼休憩があります)。
- 旅行業法及びこれに基づく命令(25問100点)
- 旅行業約款、運送約款及び宿泊約款(30問100点)
- 国内旅行実務(32問100点)
- 海外旅行実務(52問200点)
※(1)~(3)の試験科目については、国内で解説しているものと同様の内容が出題されます(問題自体は異なります)。
(4)海外旅行実務
以下の5つの内容に分かれます。
- 国際航空運賃
- 出入国法令と実務
- 海外旅行実務
- 海外観光地理
- 語学
出題範囲が広く、相当な量の勉強が必要です。
それぞれの問題の出題傾向については、3章「旅行業務取扱管理者試験の過去問から見る問題傾向」で詳しく解説します。
2-2. 難易度
旅行業務取扱管理者は旅行業界唯一の国家資格ですが、他の国家資格と比べると難易度は普通程度と言えます。
旅行業務取扱管理者の中でも、「国内旅行業務取扱管理者」か「総合旅行業務取扱管理者」かで難易度は変わります。
「総合旅行業務取扱管理者」の方が試験科目も多く、海外の観光資源や国際航空券の運賃計算、英語の問題などがあるため、難易度は上がります。
合格率
2014年~2019年の6年間の合格率は以下の通りです。
※国内試験、総合試験(海外)共に全科目受験者の合格率になります。
平均を取ると、国内旅行業務取扱管理者試験は約33.6%、総合旅行業務取扱管理者試験は約12.4%です。やはり、試験範囲が広い総合旅行業務取扱管理者試験の方が難しいことが分かります。国内旅行業務取扱管理者試験は合格率が近年高まっている傾向も見て取れます。
合格基準点
国内旅行業務取扱管理者
各科目とも得点率60%以上です。万遍なく勉強して苦手な科目をつくらないことがポイントです。
?科目 | ?合格基準点 |
(1)旅行業法及びこれに基づく命令 | ?60/100点 |
(2)旅行業約款、運送約款及び宿泊約款 | ?60/100点 |
(3)国内旅行実務 | ?60/100点 |
総合旅行業務取扱管理者試験
各科目とも得点率60%以上です。海外旅行実務は出題範囲が広く、問題数が多いのが特徴です。
?科目 | ?合格基準点 |
(1)旅行業法及びこれに基づく命令 | ?60/100点 |
(2)旅行業約款、運送約款及び宿泊約款 | ?60/100点 |
(3)国内旅行実務 | ?60/100点 |
(4)海外旅行実務 | ?120/200点 |
2-3.試験免除制度
一定の条件を満たすと、試験科目の一部が免除される場合があります。
国内旅行業務取扱管理者試験
以上に該当する場合は、各試験科目が免除になります。受験申請の際に証書の提出が必要となるため、免除制度を利用する場合は最新の受験案内をよく確認してください。
※国内旅行業務取扱管理者試験の科目免除制度ついての詳細はこちらをご覧ください。
国内旅行業務取扱管理者試験 受験案内|一般社団法人 全国旅行業協会(ANTA)
総合旅行業務取扱管理者試験
以上のいずれかに該当する場合は、一部免除となる科目があります。具体的に免除される科目の説明はやや複雑なため、詳しく知りたい方は以下の受験案内をご覧ください。
新皇冠体育3年度 総合旅行業務取扱管理者試験 受験案内|JATA(PDFファイルが開きます)
2-4.試験日程?時間
試験日程
国内旅行業務取扱管理者試験
年1回、毎年9月上旬頃に行われます。参考までに、2021年度試験のスケジュールは以下の通りです。
受験願書受付 | ?2021年6月21日(月)~7月9日(金)※当日消印有効 |
試験日? | ?2021年9月5日(日) |
試験結果発表日(発送日) | ?2019年10月27日(水) |
総合旅行業務取扱管理者試験
年1回、毎年10月中旬~下旬頃に行われます。参考までに、2021年度試験のスケジュールは以下の通りです。
受験願書受付 | ?2021年7月7日(水)~8月6日(金)※当日消印有効 |
試験日? | ?2021年10月24日(日) |
試験結果発表日(発送日) | ?2021年12月14日(火) |
試験時間
国内旅行業務取扱管理者試験
2021年度試験のスケジュールは以下の通りです。
※試験時間のスケジュールは免除科目によって異なるため、ここでは全科目を受験する場合のスケジュールを例として挙げます。
1.法令 2.約款 3.国内旅行実務 |
13:30~15:30(120分) |
総合旅行業務取扱管理者試験
2021年度試験のスケジュールは以下の通りです。
※試験時間のスケジュールには免除科目によって異なるため、ここでは全科目を受験する場合のスケジュールを例として挙げます。
1.法令 2.約款 |
?11:00~12:20(80分) |
3.国内旅行実務 4.海外旅行実務 |
?13:30~15:30(120分) |
2-5.試験地?費用
試験地
国内旅行業務取扱管理者試験
2021年度は以下の全国9都道府県から選択できます。
北海道(札幌市)、宮城県(仙台市)、埼玉県(さいたま市5会場)、東京都(大田区?豊島区?国分寺市?八王子市)、愛知県(名古屋市)、大阪府(吹田市)、広島県(広島市)、福岡県(福岡市)、沖縄県(那覇市)
※東京都?埼玉県は会場の指定はできません。
総合旅行業務取扱管理者試験
2021年度は以下の全国8都道府県から選択できます。
北海道(札幌市)、宮城県(仙台市2会場)、東京都(豊島区?港区)、愛知県(北名古屋市2会場)、大阪府(大阪市?吹田市)、広島県(広島市)、福岡県(福岡市)、沖縄県(豊見城市)
※複数の会場がある都府県の場合、会場の指定はできません。
費用
国内旅行業務取扱管理者試験
5,800円※非課税
銀行振込
総合旅行業務取扱管理者試験
6,500円※非課税
銀行振込
3.旅行業務取扱管理者試験の過去問から見る問題傾向
旅行業務取扱管理者試験は、法令、約款、地理、運賃料金計算など広範囲にわたります。覚える内容は多いですが、しっかり覚えれば十分に合格点を取ることができます。
では早速、過去問から国内/総合旅行業務取扱管理者試験でそれぞれどのような問題が出題されるのかを見ていきましょう。
3-1.国内旅行業務取扱管理者試験の出題傾向
国内旅行実務取扱管理者試験は、前述の通り以下の3科目です。
- 旅行業法及びこれに基づく命令(25問100点)
- 旅行業約款、運送約款及び宿泊約款(25問100点)
- 国内旅行実務(38問100点)
一つずつ解説していきます。
3-1-1.旅行業法及びこれに基づく命令
「旅行業法」の出題範囲は限られています。出題数や問われるテーマは例年ほぼ同じです。法令や命令に関する4つの文章から、正しいものや誤りがあるものを選ぶ問題がほとんどです。過去問を繰り返し解き、出題傾向をつかみましょう。
※2018年1月に旅行業法が改正されたため、過去問は2019年以降のものを使うのがよいでしょう。
旅行業法 サンプル問題
次の行為のうち、報酬を得て事業として行う場合、旅行業の登録を受けなければならないものはどれか。
ア.船舶会社が自社のクルーズ客船を利用し、ワンナイトクルーズを販売する行為
イ.人材派遣会社が、旅行業者の依頼を受けて添乗員を派遣する行為
ウ.コンビニエンスストアが航空会社を代理して、その航空券を販売する行為
エ.宿泊業者が、旅行者からの依頼を受け、他人の経営する貸切バスを手配する行為
答え:エ
3-1-2.旅行業約款、運送約款及び宿泊約款
問題全体の8割程度が「旅行業約款」から毎年同じような問題が出ています。旅行業法と同様、正しいものや誤っているものを選ぶ形式です。
「国内旅客運送約款」や「モデル宿泊約款」、「貸切バス約款」などから1題ずつ出題されるのが最近の傾向です。過去問題を繰り返し解き、出題傾向をつかみましょう。
旅行業約款、運送約款及び宿泊約款 サンプル問題
募集型企画旅行契約の部「旅行者の解除権」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
ア.旅行者の一親等の親族が死亡した場合、旅行者は、旅行開始前に取消料を支払うことなく旅行契約を解除することができる。
イ.旅行業者は、旅行者が契約内容に関し合理的な範囲を超える負担を求めたときは、契約を解除することができる。
ウ.通信契約を締結した旅行者の有するクレジットカードが無効になり、旅行代金を決済できなくなったため旅行業者が契約を解除した場合、旅行業者は、当該旅行者に取消料を請求することはできない。
エ.旅行業者は、スキーを目的とする旅行における必要な降雪量等の旅行実施条件であって契約の締結の際に明示したものが成就しない恐れが極めて大きいときは、旅行開始日の前日であっても、募集型企画旅行契約を解除することができる。
答え:ア
3-1-3.国内旅行実務
「国内旅行実務」は、大きく分けて以下の2つの分野で構成されています。
- 国内運賃?料金
- 国内観光資源
「国内旅行実務」は「旅行業法」や「旅行業約款」の科目とは異なり、出題傾向や出題数?配点も毎回異なります。科目毎の配点割合も毎年変動しています。
それぞれ詳しく、解説していきます。
国内運賃?料金
「各種運送?宿泊機関の運賃?料金の計算」について出題されます。手続きや規則など実務部分を含め、試験全体の40~60%程度を占めます。
「運賃?料金の計算」は特にJRに関する出題が多く、配点も高い傾向にありますので、JRを攻略することがポイントです。
【解説】同じ会社内で同じ方向の新幹線を途中下車せずに乗り継ぐ場合は、特急料金を通算することができます。東京~北上間の「やまびこ」特急料金に、東京~北上間の「はやぶさ」と「やまびこ」の特急料金の差額と、繁忙期特別料金の200円を加えた「ウ」が正解です。
国内観光資源
出題の割合は、毎年40~60%程度です。日本全国の自然資源、観光施設、民芸?工芸品、芸能、行事などについて出題されます。出題範囲が限られていないため、「幅広い知識」が求められます。
国内旅行業務取扱管理者試験の過去問はこちらから閲覧できます。 |
3-2.総合旅行業務取扱管理者試験の出題傾向
総合旅行業務取扱管理者の試験科目は、以下の4科目です。
- 旅行業法及びこれに基づく命令(25問100点)
- 旅行業約款、運送約款及び宿泊約款(30問100点)
- 国内旅行実務(32問100点)
- 海外旅行実務(52問100点)
このうち、「旅行業法及びこれに基づく命令」と「国内旅行実務」の2科目は、国内業務取扱管理者とほぼ同様の試験内容です。「旅行業約款、運送約款及び宿泊約款」は、国内旅行業務取扱管理者試験よりも出題範囲が広がり、難易度が上がります。
ここでは、出題範囲が広がる「旅行業約款」と、追加科目の「海外旅行実務」の2科目を解説していきます。
※なお、国内旅行業務取扱管理者資格の保有者は、「旅行業法及びこれに基づく命令」と「国内旅行実務」の2科目が免除されます。詳しくは2-3「試験免除制度」で解説しています。
3-2-1.旅行業約款、運送約款及び宿泊約款
国内旅行業務取扱管理者試験と同様に文章の正誤を判定する問題ですが、総合旅行業務取扱管理者試験では海外旅行に関する「国際運送約款」の範囲が追加されています。出題の中心は国内試験と同様に「標準旅行業約款」ですが、「運送?宿泊約款」の出題傾向が大きく変わります。
旅行業約款、運送約款及び宿泊約款 サンプル問題
航空2社(日本航空、全日本空輸)の国際運送約款に関する問1~2について、その内容が正しいものは「a」を、誤っているものは「b」を選びなさい。
問1.旅行会社の時刻表その他に表示されている時刻は、予定であって保証されたものではなく、また運送契約の一部を構成するものではない。
問2.旅客が航空会社に事前に通知することなく予約した航空便に搭乗しなかった場合には、航空会社は旅客の承諾を得たうえで前途予約を取り消し、又は他の運送人に対し前途予約に含まれる他の運送便の予約の取消を依頼することができる。
答え (問1) a (問2) b
「標準旅行業約款」に加え、「国際運送約款」「国内旅客運送約款」「モデル宿泊約款」を中心に対策するとよいですが、年度によっては「フェリー標準運送約款」や「保険約款」なども出題されるため、注意が必要です。
3-2-2.海外旅行実務
「海外旅行実務」は、以下の5分野で構成されています。
- 国際航空運賃
- 旅行実務
- 語学
- 出入国関係
- 海外観光資源
最近では、それぞれ5つの分野で均等に2割ずつの配点となっています。どの分野もまんべんなく出題される傾向にあるため、苦手分野を作らないよう広く学習しておくことが必要です。以下でそれぞれ詳しく解説していきます。
国際航空運賃
出発地や目的地、マイレージなど、与えられた条件に基づいた運賃計算を行う問題です。それぞれの問題に「運賃?規則」などを補足する資料が用意されていて、資料と照らし合わせながら問題を解いていく形式です。
旅行実務
「海外旅行実務」に関する基礎的な知識を問う正誤判定問題です。時差計算や航空時刻表の見方、航空?鉄道?ホテルの知識などの出題が多い傾向にあります。
旅行実務 サンプル問題
次のホテル料金プランの記述のうち、正しいものはどれか。
a.コンチネンタルプランとは、宿泊料金にコンチネンタルブレックファーストのみが含まれた料金をいう。
b.アメリカンプランとは、宿泊料金にアメリカンブレックファーストのみが含まれた料金をいう。
c.モディファイドアメリカンプランとは、宿泊料金に夕食が含まれた料金をいう。
d.ヨーロピアンプランとは、宿泊料金に朝?昼?夕の3食込みの料金をいう。
答え ア
語学
旅行業界でよく使われる用語の知識や、旅行実務に関する英文の理解を試す問題が出題されます。以前は、主に観光地?観光ポイントについて出題されていましたが、最近は旅行業者が関係する契約、規則、条件書などが出題される傾向にあります。
出入国関係
正誤判定問題です。海外渡航に関わる手続きの「旅券法」と、出入国に関わる手続きの「関税法」や「出入国管理及び難民認定法」の2項目に大きく分かれます。「旅券法」ではパスポートやVISAなどの申請について、「関税法」や「出入国管理及び難民認定法」では日本人?外国人の出入国手続きや規制品、検疫などから出題されます。
出入国関係 サンプル問題
20歳以上の日本人旅行者が帰国時に携帯又は別送して輸入する物品の通関に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
a.海外市価が1本7万円のゴルフクラブ3本のみを輸入する場合、申告価格の21万円のうち、1本分の7万円が課税対象となり、その課税価格に対し、消費税及び地方消費税のみが課税される。
b.1本5千円のウォッカ4本のみを輸入する場合は、免税範囲を超える本数に対して、簡易税率が適用され400円課税される。
c.日本製紙巻タバコ200本と外国製紙巻タバコ100本のみを輸入する場合は免税となる。
d.海外市価10万円で購入したコートが課税対象となった場合、その海外市価に簡易税率を乗じた額が課税される。
答え d
【解説】税額を計算する際は、海外市価ではなく課税価格を基準に行います。課税価格は海外市価の6割程度の額とされているため、dは誤りです。
海外観光資源
世界中の国、都市、自然資源、観光施設、料理、民芸?工芸品、歴史的人物、行事、世界遺産などの知識に関する問題です。出題範囲が非常に広く、出題傾向が予測できないため、どれだけ勉強してもきりがないと言えます。
海外観光資源 サンプル問題
問1.次の空欄に該当するものはどれか。
ベトナムの中部の都市ダナンの南約30kmにある都市[ ]は、16世紀以降ヨーロッパ人や中国人、日本人などが来航し、日本人が建てたといわれている来遠橋(日本橋)などがある港町である。
a.ホイアン b.ホーチミン c.ドンホイ d.ハノイ
問2.次の記述のうち、誤っているものはどれか。
a.フロリダ半島の南、b.ジャマイカの北に位置する東西に長いキューバは、文豪ヘミングウェイが愛し、その著書「老人と海」の舞台であり、首都c.サン?ホセのあるキューバ島はd.カリブ海最大の島である。
問3.次のアフリカの観光地とその国との組み合わせにのうち、正しい組み合わせはどれか。
a.カルタゴ遺跡 – アルジェリア
b.キリマンジャロ国立公園 – ケニア
c.アンボセリ国立公園 – エチオピア
d.ヴィクトリアの滝 – ジンバブエ
答え (問1) a (問2) c (問3) d
※海外観光資源に興味がある人には、世界遺産検定もおすすめです。
総合旅行業務取扱管理者試験の過去問はこちらから閲覧できます。 |
4.旅行業務取扱管理者試験の効率的な勉強法とおすすめ参考書
出題範囲が広い旅行業務取扱管理者試験に合格するためには、効率的に勉強できるかどうかが合格を左右します。
少しでも効率よく勉強して受験に備えてもらうため、この章では、旅行会社での海外駐在経験があり、専門学校 神田外語学院 国際観光科で教鞭を執る坂﨑弥生先生(総合旅行業務取扱管理者)のお話に基づいた勉強法と参考書について紹介します。
4-1.国内旅行業務取扱管理者試験の勉強法
4-1-1.旅行業法
過去問を繰り返し解きながら、知識の習得をすることで効率の良い学習が進められます。
前述の通り、「旅行業法」の出題範囲は限られており、毎年同じような問題が出題されています。そのため、過去問を繰り返し解くことで、知識の習得と試験対策が同時にできます。
まずは、旅行業法の全体の流れをざっくりと理解した後に、過去問演習を中心に切り替えて学習していきましょう。
4-1-2.旅行業約款、運送約款及び宿泊約款
全体の8割を占めている「旅行業約款」を中心に学習を進めていきましょう。
「旅行業約款」の中でも募集型企画旅行契約に力を入れましょう。というのも、募集型企画旅行契約と受注型企画旅行契約は、共通している規定が多いのです。募集型企画旅行契約をベースに、受注型企画旅行契約と手配旅行契約の異なる部分について特に意識しながら学習をすると効果的です。
「運送約款及び宿泊約款」は、出題範囲は広いですが比較的やさしい問題が出題されます。過去問を解きながら、「日数、金額、個数」などの数字を覚えることがポイントです。
4-1-3.国内旅行実務
国内運賃?料金
「運賃?料金の計算」は、ルールや計算手順を覚えれば確実に点数を取れる分野です。
まずは、ルールと計算手順を簡単に把握して、過去問演習を通して問題に慣れていきましょう。特にJRの運賃?料金は複雑で、攻略に時間がかかります。JRの乗り継ぎ割引などのポイントを押さえながら取り組みましょう。
また、試験では電卓の使用が禁止されているため、ある程度は手計算に慣れておく必要があります。注意しておきましょう。
国内観光資源
出題範囲が膨大です。学習するにあたり、地図を1冊用意しておきましょう。国立公園の範囲や観光地?名所などは地図で確認してください。白地図を活用して、以下のような地図を自分で作って地名や名産品などを覚えていく方法もオススメです。
また、旅行パンフレットを利用することも有効です。旅行パンフレットは、写真付きで各観光地が紹介されているため、文字だけよりも印象に残りやすいでしょう。実際に旅行した気分で楽しみながら学習することが継続のコツです。
※白地図は以下のサイトなどから無料でダウンロードできます。
白地図専門店
国内旅行業務取扱管理者試験の過去問はこちらで閲覧できます。 |
一発合格!国内旅行業務取扱管理者試験テキスト&問題集 2021年版(ナツメ社)
定価:1,600円+税
著者?児山先生からのアドバイス
国家試験なので難しい! というイメージがあるかと思いますが、勉強すれば必ず合格できます。
頻出問題をしっかり押さえれば大丈夫です。
私の授業を受けて、言われたことをしっかりやっている学生はほぼ100%合格しています。
旅行業実務シリーズ1~4
4-2.総合旅行業務取扱管理者試験の勉強法
国内旅行業務取扱管理者試験の合格者は「旅行業法」と「国内旅行実務」の2科目は免除されるため、ここでも「旅行業約款」と追加科目の「海外旅行実務」の2科目について解説していきます。
4-2-1.旅行業約款、運送約款及び宿泊約款
勉強法は国内試験の「旅行業約款、運送約款及び宿泊約款」とほぼ同様です。
総合試験で出題範囲に追加される「国際運送約款」に関しても、過去問を解きながら、「日数、金額、個数」などの数字を覚えることがポイントです。
4-2-2.海外旅行実務
出題される範囲が広く、どの分野もまんべんなく学習を進めていく必要があります。各分野とも、確実に正解できるような問題は落とさないように基本的な部分は必ず覚えるようにしましょう。
また、試験問題を解く際の時間配分も重要です。海外旅行実務の試験時間は国内旅行実務と合わせて120分(国内旅行実務免除の場合は80分)です。問題量も多く、計算が必要な問題もあるため、自分の中での時間配分を決めておきましょう。試験本番前には、本番と同様の環境で時間を計りながら過去問を解くことをおすすめしています。
今回は、特に海外旅行実務を攻略するポイントになる「国際航空運賃」と「語学」について解説していきます。
国際航空運賃
まずは、基本用語、タリフの見方(運賃表データ)などを覚えて、基本的なルールと運賃計算の方法を理解するところから始めましょう。都市コードと合わせて、その都市がどこの地域に位置するのかという知識も運賃計算の際に必要です。
また、試験本番では、問題を解く際に別冊の補足資料を使用します。問題と資料を照らし合わせながら解答していく必要があるので、あらかじめ資料の見方や解答する練習もしておきましょう。いずれにしても、繰り返し問題を解くことが有効です。
語学
語学は一夜漬けでどうにかなる科目ではありません。地道に日々学習していくしか方法はありませんが、以下の2点を押さえることで、より効果的に学習ができます。
- 出題される可能性が高い英文に慣れる
- 旅行業界で使われる専門用語を覚える
ホテル、航空会社、博物館などの規則や、契約書?条件書、英文日程表、ガイドブック、観光地などの案内文など、旅行業界ならではの問題が出題されます。日本語でも普段見慣れないものが多いため、英文契約書の実物をネットで閲覧したり、過去問を解いたりして形式に慣れましょう。最低でも5年分の過去問は解くようにしましょう。
総合旅行業務取扱管理者試験の過去問はこちらで閲覧できます。 |
旅行業実務シリーズ1~7
編集/発行:株式会社JTB総合研究所
定価:2,860円+税
5.旅行業務取扱管理者資格を取得し、旅行会社への就職を目指すなら神田外語学院がおすすめ
旅行業務取扱管理者資格を取得し、2年間で旅行会社への入社を目指すなら専門学校に通うことがオススメです。
そこでみなさんにオススメしたいのが、神田外語学院の国際観光科で学ぶことです。
旅行業界に関する専門知識を習得することはもちろんのこと、「国内旅行業務取扱管理者」の資格取得をサポートしています。
また、外国語専門学校の強みを活かし、これからの旅行業界で求められる英語力も伸ばすことができます。
5-1.国内旅行業務取扱管理者資格の取得実績
「旅行業法」「旅行業約款」「国内旅行実務」「国内観光資源」などの授業を通して試験対策を行っています。
2019年4月に国際観光科に入学した学生は、2019年9月1日に行われた「国内旅行業務取扱管理者試験」において、57名中23名が合格しました。夏休み期間を含み、わずか5ヶ月で合格率40.3%と一般社団法人全国旅行業協会が公表している2019年9月の全国合格率39.1%を上回る合格率となりました。
また、不合格の34名中、11名が実務合格※となりました。
※来年の試験で「国内旅行実務」の1科目が免除になります。
(参考)一般社団法人全国旅行業協会 各年度の実施状況、試験問題と解答、合格者受験番号
「国内旅程管理主任者」資格の取得もサポート
神田外語学院はツアーコンダクターとして働く際に必要な「国内旅程管理主任者」という資格の取得もサポートしています。授業の一環で資格取得を行っているので、取得率はほぼ100%です。
5-2.国際観光科のカリキュラム
今回はそのカリキュラムの一部をご紹介します。
旅行業法?旅行業約款
国内旅行業務取扱管理者試験の対策講座です。旅行業法の授業では旅行会社が守らなくてはいけない「法令」を理解します。旅行業約款の授業では、旅行会社と旅行者との契約を定型化することにより、旅行者のとのトラブルを未然に防ぎ、旅行をより楽しんでもらうための「約束事」を理解します。
国内?海外観光資源
国内外の地理、世界遺産、地域の行事、絵画?音楽などの芸術、伝統料理など観光に関することなど、日本だけでなく世界の知識を広く学びます。観光資源の背景にある歴史や風土について知識を深め、旅行業界で活躍できるような基礎学力と専門性を高めます。
ツアープランニング
さまざまな企画制作発表を通して、情報収集力、創造力、プレゼンテーション力を身につけます。JR東日本とのコラボレーション企画「駅からハイキング」、日本人観光客向けの「海外卒業旅行企画」、訪日観光客向けの「国内旅行企画(英語)」などの企画を行います。
ツアーコンダクター実務
ツアーコンダクターとして必要な知識、添乗業務の流れ、ホスピタリティを学びます。業務に即した実践的な知識、教養を習得します。ツアーコンダクターなどの人材派遣を手掛ける株式会社TEIと提携を結んでいるため、授業の中で実際にバス添乗員研修をおこない、「国内旅程管理主任者」資格を取得することができます。
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?神田外語学院にご興味をお持ちの方は、教育の特長について紹介している以下の記事もご覧ください!
6.まとめ
旅行業務取扱管理者について十分理解できましたか? 本記事で解説した内容をまとめると、ポイントは以下の4つです。
(1)旅行業務取扱管理者は旅行業界唯一の国家資格。以下の3種類ある
1.国内業務取扱管理者資格
2.総合業務取扱管理者資格
3.地域限定旅行業務取扱管理者
(2)資格取得によるメリットは以下の3つ
1.旅行会社の就職に役に立つ(有利に働く)
2.自身のキャリアアップやスキルアップに繋がる
3.旅行会社を起業できる(旅行商品を取り扱うことができる)ようになる
(3)試験は年1回。2019年度の合格率は、国内試験39.1%、総合試験13%
(4)旅行業務取扱管理者の試験内容は以下の通り
■国内旅行業務取扱管理者試験
?旅行業法及びこれに基づく命令
?旅行業約款、運送約款及び宿泊約款
?国内旅行実務
■総合旅行業務取扱管理者試験
?旅行業法及びこれに基づく命令
?旅行業約款、運送約款及び宿泊約款
?国内旅行実務
?海外旅行実務
未経験者の方は、まずは国内旅行業務取扱管理者試験合格を目指すとよいでしょう。一発合格できるよう応援しています!