そんな疑問をもっていませんか?
全国通訳案内士は言語系資格では唯一の国家資格で、国家資格の中では中程度の難易度と言われています。近年では合格率が下がり、2018年度試験以降は10%を切っています。見かけ上は難化しているようですが、実は試験の難易度に大きな変化はありません。
この記事では、全国通訳案内士(中国語)の金子真生先生の監修で、
?全国通訳案内士試験の難易度
?全国通訳案内士試験の年度別?言語別合格率
?全国通訳案内士試験の対策方法
などを解説します。最後まで読んで、全国通訳案内士試験に役立ててください。
目次
1.全国通訳案内士試験の難易度
全国通訳案内士は言語系の資格では唯一の国家資格です。国家試験の中では中程度の難易度とされています。
一次試験では筆記5科目(外国語?日本地理?日本歴史?一般常識?通訳案内の実務)、二次試験では外国語の口述があり、両方に合格する必要があります。外国語だけでなく、日本の地理や歴史、一般教養など幅広い知識が求められる試験です。
語学以外の知識が全くない状態でも、3年程度勉強を続ければ合格が見えてくるレベルです。
1-1.合格基準点
一次試験?二次試験それぞれの合格基準は以下の通りです。
一次試験の合格基準
全ての科目で合格基準点を満たせれば一次試験合格です。なお、合格基準点は平均点によって調整される場合があります。
二次試験の合格基準
二次(口述)試験は評価項目ごとの具体的な基準に基づいて評価され、原則的に合格基準点は7割です。評価項目は以下の5点です。
語学力だけでなく、ホスピタリティや臨機応変な対応力など、人間的な面も評価の対象です。ただ外国語が得意というだけでは合格できません。
1-2.受験者数?合格者数?合格率推移
2020年度試験の全体の受験者数は5,078人、最終合格者は489人で、合格率は9.6%でした。
一次試験?二次試験ごとのデータは以下の通りです。
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
一次試験 | 5,078 | 877 | 18.0 |
二次試験 | 1,004 | 489 | 48.7 |
最終結果 | 5,078 | 489 | 9.6 |
二次試験の合格率に比べ、一次試験の合格率が非常に低くなっています。つまり、筆記試験を突破するのが困難ということです。
言語ごとの合格率は以下の通りです。
(データ)受験者及び合格者数、合格基準|全国通訳案内士試験|日本政府観光局(JNTO)
また、最近10年間(2011年度~2020年度試験)の全体の合格率は、以下のように推移しています。
(データ)受験者及び合格者数、合格基準|全国通訳案内士試験|日本政府観光局(JNTO)
平均すると約17%ですが、2016年度からは低下傾向にあります。2018~2020年度は10%を切りました。
2011~2020年度試験の各言語の合格率は以下のようになっています。
(データ)受験者及び合格者数、合格基準|全国通訳案内士試験|日本政府観光局(JNTO)
ピンク色は最近10年間の最小値です。イタリア語以外は、最近2年間で合格率が最も低くなっていることがわかります。
1-3.全国通訳案内士試験は筆記試験の難易度が高い
全国通訳案内士試験の難しさのポイントは筆記試験にあります。それは、高い語学力が求められるだけでなく、地理や歴史をひたすら覚える必要があるからです。特に、高校で地理や日本史を選択しなかった人にとっては、それが高いハードルになります。
1-2でも触れていますが、全国通訳案内士試験は二次試験(口述)に比べ、一次試験(筆記)の合格率が非常に低いことが特徴です。最近10年間の合格率を比較してみます。
(データ)受験者及び合格者数、合格基準|全国通訳案内士試験|日本政府観光局(JNTO)
一次試験の合格率は15.6~33.7%と、二次試験(44.7~87.1%)に比べてかなり低いことがわかります。まずは筆記試験をしっかり対策することが合格のカギになるでしょう。
筆記試験の免除制度もあるが、外国語は基準が高い
筆記試験の「外国語」「日本地理」「日本歴史」「一般常識」については、特定の資格?検定試験に合格している場合、試験の免除申請ができます。
特に日本地理?日本歴史の試験は難易度が高いため、免除対象となる条件を目指した方が楽と言われることもあります。
日本地理は国内旅行業務取扱管理者資格など、日本歴史は大学入試センター試験「日本史B」60点以上や歴史能力検定日本史2級などで免除可能です。
ただし、外国語試験の免除基準は非常に高レベルの設定なので、素直に全国通訳案内士試験の勉強をするほうが近道かもしれません。
各科目の免除基準は以下の記事中で紹介しています。
◆【全国通訳案内士試験】傾向と対策、免除制度も有資格者が完全解説
2.全国通訳案内士試験の準備と対策
2章では金子先生の解説で、全国通訳案内士試験の準備と対策法を紹介していきます。
出題傾向:【全国通訳案内士試験】傾向と対策、免除制度も有資格者が完全解説(2章)
対策法:【全国通訳案内士試験】傾向と対策、免除制度も有資格者が完全解説(3章)
2-1.「外国語」の準備と対策
どの言語も基本的に観光に関する内容の問題ばかりです。受験言語によって出題内容?方式が異なるため、具体的な対策方法は省略しますが、歴史や観光分野に関する語彙を増やしておきましょう。
英語試験については、TOEIC?や観光英語検定の勉強も対策になります。以下の記事を参考にしてください。
2-2.「日本地理」の準備と対策
日本地理では地図問題が頻出します。47都道府県の位置が正確にわからないと、まず解けません。
観光名所や温泉地、特産物などについて、位置関係も把握する必要があります。白地図を用意してどんどん書き込んで覚えていきましょう。以下のような本もおすすめです。
(画像引用元)元気脳練習帳『脳が活性化する大人の日本地図脳ドリル おもしろ雑学編』 | 学研出版サイト
「脳が活性化する 大人の日本地図 脳ドリル」(学研プラス)
監修:川島隆太
定価:本体1,000円+税
2-3.「日本歴史」の準備と対策
一般的な日本の歴史だけでなく、文化史や文学史まで偏りなく出題されます。日本史全体の一連の流れを把握しておくことが大切です。まずは、以下のような参考書を何度も繰り返し読んで、流れを頭に入れてください。
(画像引用元)超速!最新日本史の流れ – ブックマン社
超速!最新日本文化史の流れ – ブックマン社
「超速!最新日本史の流れ」(ブックマン社)
著:竹内睦泰
定価:本体960円+税
「超速!最新日本文化史の流れ」(ブックマン社)
著:竹内睦泰
定価:本体960円+税
文化史については、神社仏閣、仏像を重点的に勉強しましょう。
2-4.「一般常識」の準備と対策
現代日本の産業?経済?政治や文化に関する一般常識です。テレビや新聞などで、観光?社会分野に関する話題に幅広く注目してください。例えば、経済連携協定に関する問題が出ることもあれば、アニメやドラマの舞台となった都市を答える問題が出ることもあります。
センター試験の現代社会をざっくりと勉強しておくのもよいでしょう。アウトバウンド(日本人の海外旅行)に関する内容は出ないと考えて問題ありません。
2-5.「通訳案内の実務」の準備と対策
2018年度試験から導入された新科目のため、はっきりとした出題傾向がまだ読めません。内容は法令や旅程管理など、「通訳案内の現場において求められる基礎的な知識」とされています。
また、試験範囲は原則として「観光庁研修のテキスト」となっているため、これを一通り読み込んでおくことが一番の対策になります。
◆観光庁研修テキスト – 国土交通省 ※PDFファイルが開きます |
3.まとめ
この記事の内容をまとめます。
■全国通訳案内士は国家試験の中では中程度の難易度
■近年の合格率は10%未満
■二次試験に比べ、一次試験の合格率が低い
合格率10%未満ですが、決して合格できない試験ではありません。10代で合格する人も複数います。合格率に惑わされず、しっかり対策して挑んでください。