活躍するKUIS在外公館派遣員たち(Vol.60/インド)

“活躍するKUIS在外公館派遣員たち”というテーマで、赴任中または帰国後の様子を紹介するシリーズ第60弾。

元在ベンガルール日本国総領事館派遣員の高階 大祈さんをご紹介します

高階 大祈さん(英米語学科4年生)

派遣員を目指すあなたへ

「あなたがこの記事を読んでいるということは、意識的にでも無意識的にでも、少なからず派遣員というものに興味をもっていて、あわよくば派遣員になりたいと思っている」という前提で、私の想いを綴ります。(*たまたまこの記事を開いたという人も、よかったら一度だけ読んでみてください)

「あなたは、『今』に満足しているだろうか」

今から3年前、大学3年生だった私は、妙な違和感を抱きながら生活していました。大学で授業を受けたり、バイトをしたり、友人と遊んだり。当時の生活はとても充実していて、それと同時に「退屈」していました。そう、暇ではないけど、つまらなかった。

もしかしたら、あなたも同じような違和感を感じながら生きているかもしれない。毎日なにかしらやることはあって、充実はしているように感じるのに、なぜか満たされない。

ただ、別にそんな生活を変えようとも思わない。決して満足しているわけではないけど、不幸なわけではない。そう、安定していて、楽ですよね。

『豊かさ』と『退屈さ』は相反するものではなく、共存しています。

そして今、多くの人がここに問題を抱えています。特にやりたいことはないけど、毎日なにかしらやることはある。だから、とりあえず与えられたことだけをする。そうしているうちに、「毎日充実している」と錯覚するようになってくる。「とりあえずやっていること」を「やりたいこと」だと勘違いしてしまう、無意識の中で。そして、あるとき突然、退屈してしまう。

資本主義が高度に発達した現代では、多くの人が抱える「なにをしたらよいかわからないけど、なにかしていたい」という悩みが「需要」になり、「消費」という形で満たされるような消費社会構造が形成されるようになりました。どういうことかというと、文化産業がかなり支配的な現代において、私たち(消費者)の感性や嗜好そのものがあらかじめ制作プロダクションのうちに先取りされており、消費者に対してあらかじめ受け取られ方の決められたものを提供しているのです。つまり、「なにをしたらよいかわからない」という消費者に対して、「あなたのやりたいことはこれですよ」という形でモノやサービスを提供し、消費を促す仕組みがある。そして、それはあたかも「消費者が本当にやりたかったこと」として提供される。

つまるところ、外から与えられた「あなたのやりたいこと」にあなたは心の底から満足できないのです。そういった構造のなかで生きる私たちは、もはや自分が本当にやりことなど知る術もなく、気づいたら退屈してしまっているのです。

なぜこんなことを話すのかというと、これから派遣員を目指すあなたが直面する問題でもあるからです。私は、決して派遣員になることを否定しているわけではありません(後述しますが、むしろ肯定的な立場です)。重要なのは、派遣員という選択肢が、あなたにとって「本当にやりたいことではないかもしれない」という可能性があることです。この事実に対してしっかり向き合わなければ、あなたは派遣員になってから「退屈」してしまうと思います。

では、どう向き合えばよいのか。

簡単です。強い信念をもって決断するのです。

結局、私を含めてほとんどの人は、自分が本当になにをやりたいかなんてわかりません。つまり、正解の選択肢を選ぶことなんて不可能であり、実はそもそも正解の選択肢なんて存在しないのです。あとは、「選んだ道を正解にする」という選択肢しかないのです。それが、強い信念をもって決断するということです。

これをふまえて、もう一つだけ覚えておいて欲しいことがあります。

それは、「自分に正直になる」ことです。

人生はなにをしたっていいし、どこに向かってもいい。

毎日ただ寝て起きるだけの生活でも、勉強とバイト漬けの生活でも、知らない国を駆け巡る生活でも、なんでもいいんです。生き方に正解はありません。

重要なのは、自分に正直になることです。

もしあなたが、今の生活に満足せず、少しでも「変えたい」と思うのであれば、正直になるべきです。今の生活が退屈であることを認め、変えるべきです。

もしあなたが、派遣員というものに胸の高鳴りを感じるのであれば、正直になるべきです。未来にワクワクし、それに向かって努力するべきです。

そうすることでしか、私もあなたも「本質的に」満たされることはないでしょう。

だから、その合理的な理性を捨て、非合理的な狂気をもって、今の充実した「退屈な」毎日から抜け出すのです。

胸の高鳴りを、心の底から聞こえるワクワクを、「自分を」、信じて進んでください。

そんなことをしているうちに、また元の居心地のよい生活に戻りたくなるかもしれない。
結局あなたは、つまらない生活に安住する凡人だったということです。

でも、それもまた人生です。

インド共和国(Republic of India)

【外務省HP/一般事情より】
1. 面積:328万7,469平方キロメートル(インド政府資料:パキスタン、中国との係争地を含む)(2011年国勢調査)
2. 人口:13億8,000万人(2020年世銀資料)
3. 首都:ニューデリー(New Delhi)
4. 民族:インド?アーリヤ族、ドラビダ族、モンゴロイド族等
5. 言語:連邦公用語はヒンディー語、他に憲法で公認されている州の言語が21言語
6. 宗教:ヒンドゥー教徒79.8%、イスラム教徒14.2%、キリスト教徒2.3%、シク教徒1.7%、仏教徒0.7%、ジャイナ教徒0.4%(2011年国勢調査)