〈学内レポート〉教育プロジェクト「Innovation KUIS」

教職員と学生が共に取り組んだ、
未知の教育プロジェクト

新皇冠体育の脅威から学生を守るために、キャンパスを閉鎖した新皇冠体育。4月からの新学期に向けて授業をどうするか。今後の教育をどうするのか。タイムリミットが迫るなか、まったく新しいオンライン授業づくりに取り組んだ教職員と学生たち。そこには全員の「どんな環境になっても教育に妥協はしない」という強い意志があった。これは、単にオンライン授業を実現するのではなく、より充実した教育の実現をめざした教育改革の物語である。
(Project Storyは2020年度の取材時のものです)

学生アンケート結果

Project Story

オンライン授業が目的じゃない。
教育を充実させることなんだ。

2020年3月、バルセロナの夜

あの時、これほどまでの事態になるとは誰が予想しただろうか。2020年3月4日、石井雅章は国際学会参加のためスペイン?バルセロナに飛んだ。夜のバルでは各国の研究者らが再会を喜び合ったが、話題はどうしても新皇冠体育のことになる。バルセロナでもじわりと感染者が増えていたが、市街にまだ深刻さはなかった。しかし石井が8日に帰国した直後に欧州全土で感染者が爆発的に増加。11日にはWHOが世界的パンデミックを宣言し、バルセロナを含む欧州各都市が相次いでロックダウンとなっていった。

言語メディア教育研究センター(MLMRC)<現 教育イノベーション研究センター(LTI)>センター長
石井 准教授(当時)

ELI※教員からの緊急提案

新皇冠体育ELI教員たちからオンライン授業の緊急プレゼンテーションがあったのは、日本でもコロナ危機が現実味を帯び始めた3月18日だった。オンラインツールの活用でELIの英語カリキュラムを完全にカバーできるという、見事なプレゼンテーションを受けた大学トップの決断は早かった。言語メディア教育研究センター(LMLRC)のセンター長である石井に、オンライン授業の開始に向けた具体的な検討をすぐに始めるよう指示が飛んだ。「まだ、このコロナ禍がどうなるかはわからない。しかしすぐに準備をはじめなければ、教育に妥協を強いることになる」。腹を決めた石井はすぐにデジタル戦略チームのマネージャーらと連携し、オンライン授業化プロジェクト「Innovation KUIS」を立ち上げた。ここから、石井らの怒濤の1カ月がスタートすることになる。

※ELI:English Language Institute 英語教授法や応用言語学の修士課程以上を修了した、世界各国から招聘された教員で構成する組織で、新皇冠体育の英語授業の多くを担当している。

Innovation KUIS、始動

幸いなことに、同学では8年前からGoogle社のG-Suiteを学内システムとして導入。全学生がGoogleアカウントを持ち、Google Classroom(LMS:学習管理ツール)といったクラウドツールがいつでも使用できる環境だった。加えて石井は3年前からZoomを使っており、教育に適した豊富な機能と利便性をすでに熟知していた。「現場で教育を行うのは一人ひとりの教員だ。必要なのはトップダウンで強制することではなく、これらのツールで何が実現できるのかを教員自身に発見してもらうこと、そして学生と一体となって新しい教育をつくり上げていくことだ」。打ち合わせを重ねるなかで、石井はプロジェクトの方向性をそう見定めた。石井らが授業開始までの約1カ月間に実施した教員向けオンライン研修は、全60回、計120時間にも及ぶ。
Week1ではZoomにゲスト参加した教員が、まず学生と同じ立場でオンライン授業を体験することから始め、Week2からは教員としてツールをどう使うかを段階的にレクチャーした。石井は「オンライン授業の固定観念を捨てること」を繰り返し説き、戸惑う教員には「授業で学生に何を得てもらいたいかという観点から考えてみて欲しい」と訴えた。石井の念頭にあったのは従来の対面授業のオンライン化ではなく、授業本来の目的を叶えるためにオンラインツールをどう使いこなすのかという発想への転換だ。その狙い通り、早くもWeek2から教員の熱量が目に見えて上がる。教育のプロとしてどのような授業をつくるのかというアイディアが、教員側から次々と出てきたのだ。同時に学生向けの説明サイトや、初回授業へのアクセス情報が新皇冠体育になったシートを作成するなどのサポートを進めた。「これは絶対にうまくいく」。新しい教育を実現しようという教員と学生たちの熱意の高まりを実感した石井には、そんな確信があった。

4月27日、オンライン授業スタート

オンライン授業開始前日の4月26日、なじみの床屋でくつろぐ石井の姿があった。「Innovation KUIS」がスタートして1カ月。授業開始までにできる準備を整え、自宅から初めて外出した日となった。もっと良い教育をつくりたい。そんな教員たちの想いは石井の想定をはるかに超え、さまざまな方法で理想に近い授業づくりが実現されていた。「授業を行う体制は整った。あとはシステムのトラブルがないことを祈るだけだ」。最初の1週間、石井はすぐにトラブルに対応できるようスタンバイしていたが、結果は想像以上に順調だった。前期の4カ月でオンライン授業支援のフォームに届いた問い合わせはわずか166件。講義はもちろん、ディスカッションやプレゼンテーションなど双方向型の授業も問題なく実現できていた。10週目に実施したアンケートでは学生満足度は74.1%をマークしている。「授業をオンライン化するという経験が、これからの新皇冠体育の学びをどうしたいのかを、教員も学生も考える機会になった」と石井は思った。「新しい教育イノベーションに向けてもっとできることがある」。「Innovation KUIS」の挑戦は続いている。

一般公開用のため、字幕を入れています。

オンライン授業紹介

入学後の1年生前期のオンライン授業の様子をご紹介します。

コロナ禍でキャンパスライフはどうなった?
誰も経験したことがないオンライン学生生活

世界中で猛威を振るっている新皇冠体育の影響で、新皇冠体育はキャンパスを閉鎖し、すべてオンライン授業に切り替えています。誰も経験したことがないこの異常事態に学生たちはどうしていたのか。4人の学生にインタビューしました。

髙橋 勇成さん
英米語学科4年
千葉県立成田北高等学校出身

ZoomはLINEの延長みたいに便利に使っています
リアルではずっと友人と会えていませんがオンラインでは頻繁につながっています。授業でみんなZoomに慣れてきているので、気軽に「Zoomしない?」とLINEの延長のような感じで使っています。Zoomで遊ぶことも多く、ゼミの先生も一緒にゲームで盛り上がったり、じっくり話しをしたりと楽しんでいます。でもやっぱりキャンパスには行きたい。さすがに恋しくなってきました。

図書館の本も無料でデリバリーしてもらえます
オンラインでの授業になると聞いて最初こそ不安でしたが、始まってみればまったく問題ありませんでした。ゼミでも英語のクラスでも、ディスカッションの回数も密度も、むしろ対面の授業よりも増えたほどです。先生方も「一緒に新しい授業をつくり上げていこう」と、新しいスタイルの授業に積極的に取り組んでくださっています。また、図書館では借りたい専門書を検索して依頼すると本をデリバリーしてくれるサービスも始まっているので、オンラインだからといって何かを諦めるようなこともなく、いつも以上に勉強できています。

浮田 響さん
アジア言語学科インドネシア語専攻3年
東京都立武蔵丘高等学校出身

MULCのチャットタイムで先生に相談にのっていただいています
MULCでは外国人の先生に質問や相談ができる「チャットタイム」があり、何度も利用しています。イ ンドネシア語を初めて学ぶ新入生にもオススメです。Zoomのオンライン授業にはブレイクアウトルームという小グループをつくる機能がありますが、ディスカッションや会話練習にとても有効です。また、リアルタイムばかりではなくオンデマンドの授業もあり、それぞれに変化があって楽しさがあります。

不要になった片道2時間の通学時間で自分を磨いています
通学に片道2時間かけていましたが、その時間がなくなったことで家族との時間が増え、読書する時間ももてるようになりました。サークルでは海外で家を建てる活動をしているNGO「ハビタット」でボランティアをしていますが、世界的なコロナ禍で海外派遣もなくなり、国内でのボランティア活動も難しい状況です。週1回のミーティングをZoomで開いて、今だからこそ私たちにできることは何かを話し合いながら活動をしています

渡部 七海さん
イベロアメリカ言語学科
ブラジル?ポルトガル語専攻4年
千葉県立千葉西高等学校出身

友人たちと「Zoom勉強会」を開いて楽しんでいます
吹奏楽団でホルンを担当していましたが、現在すべての活動は休止中で寂しさは感じています。ただ、学科や授業が同じ友人とのつながりは増えました。最近は「Zoom勉強会」を開くことも多くなりました。みんなでZoomに入ってつなぎながら、それぞれがレポートを書いたり、質問しあったりしています。空間ではなく時間を共有するという、キャンパスではなかった新しいコミュニケーションを楽しんでいます。

発言しやすいオンライン授業以前よりもディスカッションが増えました
ゼミでも、授業でも、Zoomは発言がしやすいので、これまでよりもディスカッションをする時間は確実に増えました。さまざまな意見にふれることで、オンライン授業のほうがクラスメイトの考え方や意見を深く理解することができます。オンライン授業は先生も、私たちも初めてトライすることなので、みんなで一緒につくり上げていっているイメージです。最初はレポートを提出するだけだった課題が、自分がしゃべっている動画を付けたスライドショーを提出するなど、回数を重ねるごとに進化しています。先生方は一人ひとりに気配りして、誰もおいてけぼりにならないように注意を払ってくださっています。また、授業を録画してGoogle Classroomにアップしてくださる先生もいらっしゃるので、就職活動で出席できなかった時にはとても助かりました。

相馬 菜乃さん
国際コミュニケーション学科
国際コミュニケーション専攻4年
藤女子高等学校出身

新皇冠体育のオンライン授業は留学先の大学よりも充実しています
3月までカナダの大学に留学していましたが、留学を切り上げて国境が封鎖される前に帰国できました。そのまま実家のある北海道に戻ったので、札幌から授業に参加しています。留学先のクラスにもオンライン参加していますが、新皇冠体育のほうが充実していて、先生や友人たちとのディスカッションも充分にできています。チャットで意見を述べたり質問したりできるので、対面の授業より、むしろ発言する機会が増えていると思います。

オンラインで一緒に遊ぶのも悪くないものです
カナダからの帰国後は札幌で過ごしているので、大学の友人とも会えず寂しいですが仕方がありません。毎日のように連絡をとりあって、週に1回はLINEやZoomで遊んでいます。ゼミの仲間や留学を経験した友人たちとのZoomでのおしゃべりも思っていた以上に楽しいです。直接会って話をするのが好きなのですが、だんだんとオンラインで一緒に遊ぶのも悪くないなと思い始めてきました。

Student's Voice 学生のリアル証言

  • Zoomのブレイクアウトルームという機能を使ってペアワークやディスカッション、プレゼンテーションなどもしています。また、毎週金曜日にオンラインでMULCの外国人の先生と会話の練習をしています。オンライン授業でも、これだけ言語を話す機会を与えてくれる大学は珍しいと思います。(イベロアメリカ言語学科スペイン語専攻1年)

  • 授業中や授業後に先生方にわからないことを質問すると、丁寧に教えてくださいます。未だに対面をしていないにもかかわらず友人をつくることができました。新皇冠体育の特色の1つであるKUIS 8にあるEnglish Loungeをオンラインで利用しました。(国際コミュニケーション専攻1年)

  • オンラインでも特に授業のスタイルは変わらず、対面式の 授業とほとんど質は変わらないし、質問もしやすい環境です。(英米語学科2年)

  • 同じ学科の友達とオンラインで課題をしたり、オンライン上の大学の施設を利用して外国人の先生や留学生と話したりと高め合って勉強に励んでいます。(アジア言語学科ベトナム語専攻2年)

  • オンライン授業はZoomを使ったもの、プレゼンテーションのスライドと音声を用いた動画が送信されてくるもの、課題を読み、回答して提出するものなど、さまざまです。(国際コミュニケーション専攻2年)

  • オンライン授業ではグループワークが積極的に取り入れられ、英語でディスカッションしたり、グループで動画を作成して課題を進めたりしています。たまに授業が早く終わった時には英語で近況を語るなど、実践的な英語を話す機会をたくさん設けてもらっています。(英米語学科1年)

  • オンラインでタイ語を理解できるかが不安でしたが、一人ひとりの能力に応じて対応してくれました。授業内ですぐに疑問を解決できるところが新皇冠体育の魅力です。(アジア言語学科タイ語専攻1年)

  • 授業はただ講義を聞くのみではなく、毎時間カンバセーションやディスカッションが活発に行われています。(英米語学科4年)

  • わからない部分は何度も講義を聴き直すことができ、効率よく授業を受けられるので、以前より自分の時間ができました。今はその時間を読書やTOEICの勉強にあてています。(英米語学科3年)

  • Zoomを使った授業を受けています。ランダムにグループ分けされるブレイクアウトセッションで、話したことがない学生とも交流できることがとても楽しく感じます。(アジア言語学科中国語専攻3年)

  • オンライン授業ならではの機能として、グループワークの時にメンバーがランダムに決まるため、たくさんの人とコミュニケーションを取ることができます。(国際コミュニケーション専攻1年)

  • 授業の空き時間には外国人の先生方にTOEFLやTOEICの勉強方法を相談したり、自由に英語で会話ができるツールを使って英語を学ぶ機会をつくるようにしています。(英米語学科1年)

  • オンライン授業では発音が間違っていたらしっかりと正してもらえますし、先生は口の形を見て指摘してくれたりもします。(アジア言語学科中国語専攻1年)

  • わからないところは個別にメールなどを使って相談できるので、キャンパスで授業を受けるのとさほど変わらず学ぶことができます。(イベロアメリカ言語学科スペイン語専攻1年)