安川 雅之さん(外務省 大臣官房儀典外国訪問室長 儀典官)KIFL国際ガイド科卒業
安川 雅之さん/ 国際ガイド科(現 国際観光科)1978年3月 卒業
お仕事紹介
現在、外務省に勤務しており、首相や外務大臣などが外国へ出張訪問する際の交通手段、宿泊施設等の手配を行っています。訪問先の国での警備の手配や政府専用機の飛行?離着陸の調整や許可手続きなど業務は多岐にわたります。先日もドイツでの首脳会談、北欧訪問の際に首相や外務大臣に同行しました。ちょうど今は国連総会やASEAN首脳会議に向けて準備に取り掛かっています。
ニュースで首相が政府専用機に乗り込む映像が流れますが、出発までの2~3週間の準備はとても大変です。訪問先も先進国ばかりではなく、飛行機がようやく着陸できるような空港しかない国で、質素なホテルしかない場合は、首相官邸のニーズに合う宿泊施設を探すのに苦労することもあります。
また、外国での事件で不幸にも邦人が巻き込まれてしまった際には、飛行機で現地に飛び、安否確認などを行うことも私たちの重要な役割です。外国に行くためには、さまざまな国の領空を飛ばねばならず、領空通過の許可が必要になりますが、訪問国によっては、20ヵ国以上の許可を取るケースもあります。このような突発的な訪問の場合は時間がないため、とりあえず飛行機で出発し、機内から電話で許可を取りながら現地に向かうこともあります。
私たちは組織の中での歯車だと思います。あまり良い印象を持たれない表現ですが、それぞれの歯車が自分の役割をしっかりと果たすことで初めてスムーズに事が運ぶのです。それがこの仕事のやりがいであり、自分の仕事をしっかりと行っているという誇りはつねに持っています。
神田外語学院を経て、外務省在外公館派遣員へ
北海道出身の私が神田外語学院を選んだ理由は、これからの時代は英語が必須だと考えたことと、東京に行きたかったから。入学して最初に習ったのが「言葉は世界をつなぐ平和の礎」という言葉でした。一番大切なのは、言葉を完璧に話すことではなく、世界のさまざまな人々とコミュニケーションをとること。自分は決して優秀な学生ではありませんでしたが、神田外語学院での生活は、自分の人生において後のキャリアにも大きな影響を与えていると思います。
神田外語学院を卒業後は旅行会社に就職し、しばらく働いていましたが、神田外語学院の同窓生が外務省在外公館派遣員として海外で活躍していることに刺激を受け、自分自身もチャレンジしたところ合格できました。最初の派遣先の国が、アフリカのガボン。決まってすぐに本屋に行って、世界地図を見てガボンを探した記憶があります。そして3年間、ガボンの大使館に勤務し、その後、外務省に職員として採用となりました。
これで日本に帰るのかと思いきや、そのままアフリカのセネガルに転勤に。そこで3年間勤務し、日本について広報する仕事などに携わっていました。
結婚して子供が生まれたのもちょうどその頃のことです。その後、東京にいったん戻りましたが、タイのバンコクや、スペイン、ニューヨークなどにも赴任。バンコクでは軍によるクーデター、ニューヨークでは9.11テロに遭遇したこともありました。
自分の意思を伝えるためには語学力が必要
海外に行って活躍してみたいという人にとっては、外務省は間違いなく最適な職場です。国の代表として海外に行けることもやりがいがあるでしょう。そして、外務省で働くことの魅力だと私が思うのは、外国人の友だちができること。特に私が行ったガボンやセネガルなどの国は、当時は日本人が100人足らずしかおらず、同年代の20代の人と友だちになるためには、現地で作るしかありません。外国人の集まりそうないろいろな会合に積極的に顔を出したり、一緒にスポーツをする機会を持ったりしたものです。それは語学の上達につながりますし、そこで知り合った人たちに助けられてきました。毎週末はどこかの家でご馳走になったり、昼になると「早くランチを食べに来い」と電話をしてくれる友だちも増えました。
あれから30年、40年も経ちますが、あの時に知り合った人たちとは今も付き合いがあります。以前、新宿を歩いていた時、海外でお世話になったフランス人に偶然40年ぶりに会ったことがありました。お互いにうれしくて、新宿の交差点で男同士が抱き合ってしまいました。そんな友だちは宝物です。日本では、学校を卒業して就職すると同僚はできても、友だちはなかなかできないと思います。だから、外国で暮らして、外国人の友だちができることはとても魅力的なことだと思います。
東京にある各国大使館の人たちは日本語の勉強をしています。外務省に勤務していても東京にいる限りは、日本語でコミュニケーションができます。もちろん、外国に行く時には逆になるので、やはり語学力はとても重要です。それは仕事だけではありません。友だちを作りたいなら、語学がある程度できた方がよいと思います。身振り手振りのコミュニケーションでも、もちろん友だちはできるけど3日ぐらいでお互いに飽きてしまう。友だちに自分の意思を伝えるためには語学力が必要であり、それが学ぶためのモチベーションとなります。
最初は少し間違った文法や言葉を使っても良いから、外国語を話せるように若いうちから自分に投資してください。また、どの国で活躍するにも英語は必須ですが、さらにもう1言語を習得することをお勧めします。新聞を読んだり、道を尋ねて、返答がわかるくらいでも構いません。コミュニケーションのチャンスをどんどん増やして、世界中に友だちを作ってください。
制作:神田外語学院
‹ 荒奥原、大胡、西連地さん安川 雅之さん川﨑 敏秀さん ›