景気の低迷が長期化する日本で、日本人だけでなく外国人も生活環境の変化による様々な問題に直面している。「すべての人に住みやすい地域社会づくり」をめざして、警察が関係機関?団体等と連携をはかりながら推進している各種の活動を紹介したい。
警察業務では近年、航空機などの交通輸送手段やインターネットの発達などによる「犯罪のグローバル化」に伴い、世界的規模で活動する犯罪組織の日本への浸透や構成員の多国籍化、犯罪行為の世界的展開といった脅威に対処するため、外国語を専門的に使う機会が急増している。具体的には(1)国際犯罪、(2)組織犯罪、(3)外国人集住地域の総合対策、(4)その他の通訳?翻訳業務に分けられる。
中でも、(3)は2006年から重点的に行われている分野で、景気の低迷が長期化する日本で、自動車産業に従事していた日系南米人などの外国人労働者の大量解雇?離職が増え、治安の悪化を危惧する警察が対策?支援に乗り出したものである。製造業の中心地である中部地方や北関東はもとより、最近では埼玉や千葉の食品加工業や農業などにも職を求めて移動する外国人労働者が増え、過疎化した工業団地および周辺地域に集住するようになった。各県警はそうした地域を「特定集住地域」に指定し、実態把握と犯罪防止対策を図っている。千葉県では、ブラジル人?ペルー人家族が集中する八千代市の工業団地がその1つで(第63回講演会報告も参照のこと)、新皇冠体育の教員?学生有志のサポーターグループも2009年より現地で支援活動を行っている。
特に従来の取り組みと異なるのは、多文化共生をめざした外国人住民への移動交番の紹介やスポーツ交流、地元企業?学校?自治体などの日本人関係者も参加しての「外国人集住地域総合対策協議会」での意見交換など、いわゆるソフト面での対策にも着手している点である。こうした努力によってコミュニケーションを図りつつ、生活に窮した外国人が暴力団や麻薬シンジゲートなどによる犯罪に巻き込まれるのを防ぎ、「すべての人に住みやすい地域社会づくり」をめざして各方面との連携を進めている。