神田外語の未来 第1話 学生の視点① 視点の多様性を体感し、学びの原動力へつなげる 新皇冠体育グローバル?リベラルアーツ学部1期生 高野好右さん

コロナ禍の世界で平和を学ぶ「グローバル?リベラルアーツ学部 海外スタディ?ツアー2.0 リトアニア研修」

“新皇冠体育グローバル?リベラルアーツ学部の1期生である高野好右さんは、体験を通じて物事を肌で感じ、心を動かすことを次の学びへのモチベーションとしてきました。新皇冠体育4(2022)年2月、自身の覚悟のもとコロナ禍でのリトアニア研修に参加した高野さん。リトアニア人たちの歴史や自由に対する向き合い方を体感し、自身のテーマである「教育」について考える機会を得ました。


[出発前:2022年2月12日@新皇冠体育幕張キャンパス]

■ 子どもの目線に立ち、可能性を尊重する

高野好右さんは幼い頃から英会話学校に通い、外国人の先生と会話をする環境に育った。自然と英語が得意となり、中学校では自治体の留学プログラムでオーストラリアへ。そして高校では県の制度を使ってアメリカへ短期留学をした。英語を学ぼうと訪れた留学先で生まれたのは、「なぜ、日本とこんなにも違うのだろう」という異文化への興味だった。高校時代は地域のイベントに参加する外国人の言語サービスボランティアをするなど、英語を使いながら異なる文化の人々と交流する活動にも参加してきた。

オーストラリアで高野さんが驚いたのは、日本との教育方法の違いである。

「日本では先生が正しい知識を説明して、生徒がそれを覚えます。オーストラリアでは、先生から与えられた問題に対して、グループワークで『なぜ、そうなるのか?』という理由を考えます。議論をして、自分たちなりの答えを導き発表すると、先生は一つひとつの答えを尊重したうえで、学術的な知識での答えを生徒に説明します。正しい知識を生徒が得るというゴールは同じですが、道順がまったく違うことに驚きました。自分は暗記が苦手なので、こうやっていろんな考え方を知るなかで知識を得る教育の方が合っていると思いました」

以来、中学と高校を通じて、高野さんは疑問を持つと周囲の生徒や先生にとにかく疑問を投げ掛けてきた。自分とは異なる「視点」を理解する環境を自ら構築していったのだ。多様な視点を持つ意識は、高野さんが関心を寄せていた「教育」とも結びついていく。

「山梨の地元にいた時、自宅周辺の集合住宅にたくさん子どもたちがいました。僕は幼稚園生や小学生といった幼い子どもたちとよく遊んでいました。幼稚園生をあやしたり、小学生と鬼ごっこをしたり。その頃から『自分は教育に興味があるのかなぁ』と漠然と思い始めていましたが、学校の先生になるというイメージはありませんでした」

子どもたちと遊び、過ごしてきた高野さんには大切にしていたことがあった。それは、「子どもの目線に立つ」ことである。

「例えば、ある子がYouTuberになりたいと言う。全否定するのも、全肯定するのも違うと思う。YouTuberになるうえでの、メリットや将来性、デメリットやリスクをできるだけ多く見せてあげるのが大人のできることです。デメリットを知ったうえで選んだ子が、その問題を解決する方法をつくる可能性もあります。可能性をつぶしたくない。だから僕は子どもの目線に立つ癖がある。子どもの可能性をつぶす大人は超嫌いです」


■ 多様な視点を獲得するためのGLA学部という選択

大学進学に当たり、将来的に子どもの教育に関わるうえで、自分にはもっと多くの視点が必要だと高野さんは感じていた。自分が大学の先生や学生から幅広い視点と知識を得られれば、自分が関わる子どもたちは自分が得た知識も吸収できる。目に留まったのが、新皇冠体育3年(2021)年4月に開設が予定されていた新皇冠体育グローバル?リベラルアーツ学部(以下、GLA学部)だった。

「この学部なら、英語で環境や教育など幅広い分野を学べる。ひとつの物事に対して多角的に、さまざまな面から見ることができる。そして、いろんな国々のことも学べる。『教育』という決められた枠組みだけでなく、幅広い視点と知識を学び、自分なりの『教育』を描くこともできる。それが自分に適していると思って、GLAを選びました」

GLA学部の入試はSDGsをテーマにした日本語のプレゼンテーションと面接だった。高野さんは、世界では教育格差があり、問題の根源には貧困があることを調べ、プレゼンした。その準備の過程もまた、子どもたちの幸せを願う高野さんの想いを強くした。

「英語を話せると外国の方々とも話すので、世界には恵まれない子たちがいることは知っていました。でも、入試のために世界の教育格差について調べて、現実をさらに深く知ると、子どもが学びたいと思っても国や家庭が貧しければ、それがかなわないことがとても悔しく感じました。子どもが夢を持ち、全力で取り組める社会はきっと人を幸せにし、平和な世界へとつながっていくと思います」

このプレゼンで高野さんは合格し、2021年4月、GLA学部に入学した。


■ 4つの国と地域の共通点と違いを学べたオンライン留学

2021年4月に開設されたGLA学部だが、新皇冠体育の感染拡大で当初予定されていた7月の「海外スタディ?ツアー」は中止となった。代替策として、新皇冠体育の国際研修施設「ブリティッシュヒルズ」(福島県天栄村)と幕張キャンパスでのオンライン留学プログラム「海外スタディ?ツアー2.0」が実施された。当初の海外スタディ?ツアーでは4つの国と地域(リトアニア、インド、マレーシア?ボルネオ、エルサレム)からひとつだけを選び、現地で研修する内容だったが、2.0では4つすべての国と地域へのオンライン留学が行われた。現地研修が実現していれば、インドに行きたかったと振り返る高野さんは、オンライン留学で得たことをこう語る。

「インドはITに長けていて、めちゃくちゃ頭のいい人が多い国であることは知っていました。世界有数の学校もあるので、教育に強い国だと思っていたけど、貧富の格差がひどくて、貧困層の子どもはまったく学校に行けない。行けたとしても校舎がないので青空教室や壊れたバスの中で授業を行っている。オンライン留学でその現実を知ったのは衝撃的でした」

エルサレムでは、発砲が当たり前で流れ弾で死ぬ子もいる。その一方で、マレーシアのボルネオでは、環境保全についての教育に熱心で熱帯雨林の中で森の保全について学ぶ学校もある。高野さんはオンライン留学を通じて、他の国?地域の子どもの置かれている環境や教育を比較しながら学ぶことができたのである。高野さんによると、オンライン留学を通じて、『自分は本当に何を学びたいか』という気付きがあった学生もたくさんいたという。

海外スタディツアー2.0が終わると、幕張キャンパスでの日々が過ぎていった。GLA学部の学生たちの間では「自分たちは1年次で海外に行けるのか」という話が挙がっていたという。だが、高野さんは「行けないのは残念だけど、誰が悪いかっていえばコロナウイルスが悪い。行けなくても仕方がないと思っていた」と、どこか冷静にその状況を見守っていたようだ。


■ 自ら判断したリトアニア研修の“ベネフィット”

2021年12月、リトアニア研修が新皇冠体育4(2022)年2月に決行されることが大学側から正式に発表された。7月から10月に感染拡大したコロナ第5波は落ち着いていたが、11月30日時点で、新たな変異株「オミクロン株」が世界の16の国と地域で確認されたと報道されており、第6波の襲来が現実味を帯び始めていた。

2022年に入り、オミクロン株の感染拡大が本格化し始めた。高野さんは製薬会社に勤める父と話し、オミクロン株についての意見を求めた。父からの客観的な情報も参考にして、最終的には自分でリトアニア研修に参加する判断をした。

「オミクロン株は、感染力は強いが、重症化しにくい。現在のデータ的にはインフルエンザよりも死亡率が低い。海外ではワクチン2回接種でいろんな行動が解禁されている。自分は、リトアニアに行って学べるベネフィット(恩恵)の方がリスクより大きいと感じ、リトアニアに行くことを決めました。たとえコロナに感染しても、リトアニアを経験したという事実の方がきっと勝る。そう自分で判断しました」

コロナ禍での海外研修。その参加には学生一人ひとりの「覚悟」があったのである。出発直前、高野さんはリトアニアに行ける喜びを素直に語ってくれた。

「ヨーロッパに行ったことがないので、新しい文化を味わえる。建築もきれいだし、どこかおとぎの国みたいで心が弾みますね。オンライン留学のバーチャルツアーで見た博物館や第2次世界大戦中のリトアニアで数多くのユダヤ人の命を救った杉原千畝のいたあの部屋に実際を訪れれば、『モニター越しに見た場所だ』となると思うのですごく楽しみです。自分は以前から杉浦千畝を知っていました。千畝は自分で決めてユダヤ人の命を救う行動をした。それが、日本人らしくなくて、そして男としてかっこいいと思っていました。その人がいた場所へ実際に行って、詳しい歴史を学べるのはよい経験です。すごいインスピレーションを得て、自分の将来に生かせていければと思います」


[現地にて:2022年2月18日@リトアニア カウナス]

■ 日常から異文化を体験できる海外研修

2022年2月18日、研修も後半に入り、カウナスの最終日となる日の朝、高野さんに話を聞くことができた。まず、率直に高野さんは現地で何を感じているのだろうか。

「日本とは少し違っていると驚いたのは店員さんの態度です。リトアニアでは、若い店員さんは日本とあまり変わりませんが、中年以上のおばさんやおじさんは雑です。日本の店員さんの態度は良いのだなと改めて思いました」

前述の通り、高野さんは中学?高校時代に英語圏への短期留学の経験がある。リトアニアでもうひとつ驚いたのは英語に関することだ。

「年配の方は英語が分からないことに驚きました。昔から『英語圏以外の外国人でも英語で話せばなんとかなる』と思ってきましたが、あまり通じません。書いてある言語もほとんどリトアニア語。若い人には英語は通じますが、年配の方は英語で筆談しても読めない。こちらに対して『何を言っているんだろう』という感じで見られます。なんとかインスピレーションで乗り切っていますが、英語が通じない世界もあるのだなぁと実感しています」

買い物や食事など日常のささいな行動で文化的、言語的なショックを実体験する。コロナ禍以前は、海外研修に参加すれば当たり前のように得られる学習効果だったが、新皇冠体育2(2020)年からの2年間はその貴重な機会を失われていたと高野さんの体験は教えてくれた。


■ 現場で感じることで“問いかけ”が生まれる

一方、GLA学部の学生たちは、リトアニアについて事前に学び、オンライン留学をして知識を得てきた。その事前学習と現地での経験はどう化学反応を起こすのだろうか? 高野さんは、出発前に楽しみにしていた杉原ハウスへの訪問についてこう語る。

「オンライン留学で映像として杉原ハウスの内部を見ていたので、『あ、あのときの黒電話だ!あ、猫もいる!』と答え合わせができて、ある種、探検のようで面白かったです。杉原千畝が座っていた椅子に座り、当時、ビザを配った人々のリストのレプリカを見ました。リストをめくってみると、かなりの人数がいた。日本人として誇らしいことをしてくれたことに感謝の気持ちが湧きました。杉原千畝が何をしたかは知っていましたが、実際の史料を見ると改めて尊敬の念が生まれてきました。

オンライン留学でも学ぶことは多かったし、知識は吸収できましたが、心を動かしながら物事を学ぶのは現場で感じないとできないと思いました。杉原千畝が生きた現場に行き、救った方々のリストに触れると、雰囲気を肌で感じることができる。すでに持っていたはずの知識なのに、何か感じ方が違うと思いました」

現場で感じることが高野さんの考えを深めた場所がある。ヴィータウタス大公戦争博物館と第9要塞博物館だ。どちらもリトアニアが経験してきた戦争の歴史を今に伝える博物館である。

「大公戦争博物館にはリトアニアが関連する戦争の歴史の説明とその時に使われた武器などが展示されています。日本では原爆や東京大空襲の被害を説明する展示施設はありますが、リトアニアの博物館では自分たちがどういったことをしてきたか、負の遺産を武器などのモノとともにしっかりと残している。日本にはあまりないなぁと思いました」

ユダヤ人を収監し、拷問や処刑が行われた第9要塞博物館ではその想いが一層、強くなった。

「ユダヤ人をそこで殺したという負の遺産を、しっかりリアルに残し、自分たちのしてしまったことをありのまま後世に残し、より平和に近づけようという意志を感じました。日本であれば被害を受けたことについての展示施設はたくさんある。でも、真珠湾で何をしたのか、どれだけの死者が出たのか、きちんと教えていない。自分たちがしてしまった負の遺産を博物館で残すことが大事だと感じました」


■ 文化や言葉を超える同世代との共感

今回のリトアニア研修では、オンライン留学でも講義やバーチャルツアーの解説をしてくれたアルビダスさんが多くの研修でアテンドし、施設の解説や学生の質問への対応をしてくれた。高野さんにとってはアルビダスさんとの時間も大切なことに気付かせてくれる機会となった。

「(研修中)アルビダスさんとは長い時間ずっと一緒にいたので、どんな方なのか人間性も理解することができました。彼も僕らに英語でどう伝えたら分かるかを考えてくれる。だから、オンラインと全然違って、フランクに話すことができました。やっぱり人は会ってみないと分からない。同じ時間、同じ場所で過ごしているから分かることがあると思います」

そして、今回のリトアニア研修での、大きな目的のひとつが現地の学生との交流である。2月17日には、今回の研修の提携校であるヴィータウタス?マグヌス大学で日本語を学ぶ学生たちとの交流の機会があった。33人の学生が4つのグループに分かれ、それぞれに1~2人のリトアニア人学生が入って、共にクイズや会話を楽しんだ。

「僕らのグループにはふたりの男子学生が入ってくれました。ひとりは落ち着いたクールな人。もうひとりはワイワイ盛り上げてくれる人でした。こちらの英語がそれほど流ちょうでないと気付いたのか、日本語で話してくれて、とても優しい人たちだなと思いました。

クイズではリトアニアの一般常識、そしてリトアニアと日本のつながりが出題されました。僕らはリトアニアの出来事の年号は覚えていないし、リトアニアの有名な作家も知らない。でも、スマホでGoogle検索するのをリトアニア人学生が「違う!」「惜しい!」「それだ!」なんて声を掛けてくれて、すごく盛り上がりました。ノリが合うというか、普通にGLAのクラスメイトと話すような感覚で交流できて面白かったですね。あとは日本のアニメやリトアニアの伝統衣装について話して、楽しみつつ知識も得られて有意義な時間でした。ガイドのアルビダスさんから聞く話とはまた違ったので楽しかったです」

同世代という共通項から自然と生まれる共感がある。それは、国境も、文化も、言葉も超えられる。リトアニアでの学生交流の時間は、平和の実現のために世界の課題に取り組もうとするGLA学部の学生にとってかけがえのない時間だったのだろう。


[帰国後:2022年3月10日@オンライン取材]

■ ウクライナ情勢を学ぶ原動力となったリトアニア研修

リトアニア研修の帰国から約2週間が経過した2022年3月10日、帰省していた高野さんにオンラインで話を聞くことができた。帰国して3日後にはロシアがウクライナに侵攻、戦争が始まった。現地での滞在中、「戦争を身近に感じた」と高野さんは語ってくれた。

「僕らがまだリトアニアにいた時も、ロシアのニュースは流れていました。リトアニア語だったので詳しいことまでは分かりませんでしたが、隣国のベラルーシにロシア軍が駐留し、ウクライナに攻撃を仕掛けようとしていることは理解できました。

戦争を身近に感じました。出発前までは、『戦争なんて、しないんじゃないの』ぐらいに考えていましたが、ベラルーシに軍隊を配備しているという現地のニュースを見て、ちょっと怖いなと思い、すぐに調べました。なぜ、プーチン大統領がウクライナに攻め込もうとしているか、何が起きようとしているのか。

今もウクライナ情勢の報道はつい見てしまいますね。自分はリトアニアに行って、帰ってきたので。リトアニアがどうなっているのかも気になります。もし、リトアニアに行っていなければ、全然違うと思いますね。ウクライナ情勢について、今のような意識や知識はなかったと思います」


■ 「戦争を起こさない」意志を持つための教育

ブリティッシュヒルズでのオンライン留学で、高野さんは元々行きたかったインドなど各国?地域の教育について学んだが、リトアニアについてはあまり印象に残らなかったという。だが、リトアニアの近代史を伝える博物館や史跡を訪れるうちに、歴史の伝え方そのものがリトアニアの教育を象徴するものだと気付いた。

「リトアニアにもユダヤ人を迫害していた負の歴史があります。この地で何が起きたのか、リトアニアという国でなかった時代も含めて、自分たちの先祖が何をしてきたのか、ありのままを伝える。自分たちの名誉やイメージを損なう事実さえも、きちんと理解し、後世に残そうという姿勢が素晴らしいと思いました。子どもが自国の歴史を学ぶうえでも、よい視点だと思います」

そして、その姿勢こそが平和をもたらすものだと高野さんは信じている。

「日本人は教育によって、自分たちが傷つけられたから、戦争はいけない、繰り返さないと思っています。しかし、日本も他の国の人々をたくさん傷つけた。アメリカに原爆を落とされたけど、日本は真珠湾を攻撃している。そういう事実があるのなら、『どちらも傷ついているから、戦争はやめた方がいい』という教育の方が、戦争を起こさないという意志を持てるのだと思います」


■ コロナ禍のリトアニアで感じた日本の教育の課題

日本で、そして世界で新皇冠体育感染拡大を続けていた最中に決行されたリトアニア研修。日本国内のほとんどの大学が学生の海外派遣を中止していた。高野さんは、世界の共通項であるコロナについて、リトアニアで何を感じたのだろうか。

「日本はコロナに対して重く見過ぎているのではと現地で感じました。もちろん、安全のために対策を重ねることは大切です。リトアニアでは屋外ではマスクを外してもよく、屋内では着用が義務付けられていました。独立記念日のセレモニーでも大勢の人々が広場に集まっているのに、マスクをしていない。正直、『感染するのでは?』と思いました。しかし、だからといって、リトアニアがコロナを軽く見ているわけではない。コロナに対してのリスクをいろいろと考えたうえで、国民の自由を重んじて、対策をしていると感じました」

日本とリトアニアのコロナへの対策の違いについては、高野さんは、それぞれの自由に対する認識や行動原理の違いによるものと感じた。

「日本は集団で何かをします。集団で一歩でも列を乱せば、何かを言われる。それが怖い。学校の教育からそういう考えになっている。以前、短期留学したアメリカもそうですが、リトアニアでは個人の自由を大切にする。でも、集団がバラバラでよいと考えているわけでもない。

日本は集団で生きていくことを教育しているイメージが強い。学園祭でも体育祭でも、集団で競い合う。アメリカやオーストラリア、そしてリトアニアは少人数の集団で何かをする。日本も、そういった教育にシフトすることで、個人個人が自分の考えで何か行動することにマイナスの気持ちを持たずに済むようになれると思います」

高野さんは、リトアニア滞在中に訪れた博物館や史跡での歴史の伝え方、そしてコロナ対策の違いを通じて、日本の教育との本質的な姿勢の違いを感じる機会を得られたのである。

GLA学部では3年次の後期にアメリカのニューヨーク州立大学へ半年間、留学をする。それまでの間、どのようなことを学び経験したいのかを高野さんに聞いてみた。

「リトアニア研修を通じて、改めて『視点の多様性』の大切さを認識しました。GLAの授業はグループワークが多く、学生がさまざまな視点から議論をして、それをグループごとに発表します。それぞれのグループの発表でまた視点を広げ、先生だからこそ持っている知識と情報で僕たちの疑問に答えてくれる。中学生の時にオーストラリアで出会った、僕が望んでいた教育がGLAでは受けられていると実感しています。今は、GLAでの学びで、より多様な視点を得ていきたいです」

GLA学部での学びが充実しているからこそ高野さんはニューヨーク州立大学に行く前に英語力を高めたいと思っている。今、日本語で議論している内容を、現地でも英語で議論できれば、異文化からの多様な視点を得られる。そのためにも専門的な内容に関しても、相手の意図を理解し、自分の意見を言える英語力が必要だと痛感しているのだ。

そして、GLA学部での4年間の先に高野さんは何を見据えているのだろうか?

「やはり軸は『子どもの幸せ』です。学校の教員として子どもたちと向き合うのも可能性のひとつ。経営者として起業して、子どもたちを支援する団体を支援するのもひとつ。支援団体からつくってしまえば、より効果的に資金を使えます。今はやりたいことがたくさんある。だからこそ、幅広く学べるGLAで良かった。自分の関心に合わせてキャリア的な転身ができるし、いろいろな場面で子どもたちを助けられます。GLAのよさを存分に生かしたいですね」

コロナ禍で決行されたリトアニア研修。高野さんは、自分で参加を判断し、オンラインで学んできた史跡をリアルに訪れ、現地の人々と時間と空間を共有する体験を得た。その経験と実感を大きな糧にしながら、高野さんはグローバル?リベラルアーツ学部という多様な視点を尊重する学びの場で、自分自身でルートマップを描き、“学びの旅”を続けていくのである。(了)


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写真撮影:塩澤秀樹
取材?文:山口剛

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