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仲代表の「グローバルの窓」

仲代表の「グローバルの窓」

第29回 “Don’t underestimate business with one hundred million yen in ASIA!” (アジアでは1億円規模のビジネスをないがしろにするな!)

2022.09.13

 マネジャーとしてアジアに配属された私は、お世話になった周辺事業部(フロッピー?ハード?光ディスクドライブの事業部)の方からさっそく1億円の引き合いをいただきました。受注は確実のビジネスでしたが、伝票処理や出荷対応など細かな対応を必要とする案件でした。「仲君のマネジャー昇格のご祝儀としてこの案件をあげるよ」と言われました。

 嬉しかったのですが、手間暇がかかるわりに実りの少ない案件と感じたので、事業部長に「受注の可能性ありますが1億円の小さな案件です」と報告しました。すると事業部長から「欧州では1億円は小さいかもしれんが、アジアではこういう案件を積み上げていかないとなかなか何十、何百億円の規模にならない。よく覚えておきなさい」と言われました。

 欧州の意識が抜けなかった私は、(手間がかかるなら1億円の受注を諦めてもいい)くらいのスタンスでしたが、事業部長の一言で目が覚めました。その後、アジアで受注活動をするにつれ、この事業部長の言葉が身に染むことになります。

 アジアは国が多く、当時(1990年代)は一つ一つの国の経済力が今日ほど大きくありませんでした。また、中国と香港は中国部の管轄でしたので担当外でした。一方、「これからはアジアが伸びる」と言われ、NECも90年代にはアジアに人材をシフトしていました。

 国の名前を覚えることから始まった私のアジア時代ですが、どの市場を狙うか、いわゆるGTO(Go To Market)戦略を練る必要がありました。売るべき商品は量販商品(サーバー、PC、プリンター、モニター、携帯電話、ページャー、PBX、キーテレフォン等)です。

 まずは国の一般情報を頭に叩き込みました。特に「一人当たりGDP」と「人口」を大きな目安としました。まず当時の一人当たりGDPを見て、1万ドル以上を第1群、1千ドル以上を第2群、1千ドル以下を第3群として大きく区分けし、その上で人口を見て市場のポテンシャリティを勘案しました。もちろんそれ以外にも重要ファクターはありますが、まずは国の大雑把なポジショニングをそのような観点から頭に入れ込みました。第1群は、台湾、シンガポール、韓国、第2群は、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、第3群はインド、ベトナム、パキスタン、バングラディシュ、カンボジアという具合です。

 中期計画では国別(9か国)に戦略を策定することとなり、私はシンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、インド、ベトナムを担当、他の2人のマネジャーが韓国、台湾、タイを分け合うことになりました。私だけ国の数が圧倒的に多かったのは、私の担当のシンガポール拠点がタイ、台湾、韓国を除くすべての国をカバーしていたからです。6か国の中期計画策定作業は地獄でしたが、そのお蔭で国の理解が進んだことは、ありがたかったです。

 欧州も国が多かったですが、ドイツ語を専攻したこともあり、欧州には馴染みがありましたが、アジアは全く白紙でしたので、最初は基本的なところから学ぶ必要がありました。
欧州はキリスト教がほとんどで、通貨もユーロ、一人当たりGDPもそれなりのレベルでしたので、アジアに比べると国と国の差異は少ないといえるでしょう。特に経済力は、欧州ではどの国もそれなりのレベルを確保していました。しかし、アジアは宗教も通貨もばらばら。人口にいたっては、30万人のブルネイから12億人のインドまで、また、一人当たりGDPも百ドル代から3万ドル代までその差は莫大です。多様性という意味では欧州よりもアジアの方が断然大きかったのです。

 こうした基礎情報、特に経済力や該当商品の市場規模を国ごとに把握するにつれ、1億円というビジネス規模がアジアでは決して小さくないことがわかってくるのでした。欧州マインドからアジアマインドへ。これが私のアジア担当時代に直面した最初の課題でした。


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