多くの企業で外国籍人材の採用が増えるなか、「外国籍社員の研修をどのように行ったらよいか」という悩みを抱える人事担当者も少なくないのではないでしょうか。外国籍社員は、異文化をバックグラウンドとして持ち、日本語のスキルアップも図らなければならないというように、ほかの日本人社員とは状況が異なります。そのため、社員研修のカリキュラムも特別な配慮が必要です。今回は、外国籍社員向け研修の目的や内容、失敗しがちな点?成功のポイントなどを見ていきます。
外国籍社員向け研修を行う目的
まず、外国籍社員向けの研修を行う主な目的を考えましょう。
日本の文化、ビジネスの慣習を知ってもらう
世界にはさまざまな国や地域があり、ビジネスにおいてもそれぞれ異なる文化?慣習を持っています。例えば、ミーティングの開始時間を設定した場合、日本では、その時間より前に会場に到着しているのが一般的なマナーとされていますが、海外では必ずしもそうではありません。数分遅れて来るのは許容範囲とされていたり、場合によってはさらに長い時間相手を待たせてもマナー違反にならなかったりします。
名刺交換の慣習も日本と海外とでは異なります。日本では、「名刺を両手で扱う」、「出会ってからすぐに相手に渡す」といったルールがありますが、海外では名刺を片手で扱ったり、出会ってしばらくたってから渡したりするのが普通とされる場合もあります。
まずはこうした文化や慣習の違いを伝えることで、日本のビジネスの現場に出ても慌てず対応できるようになってもらうことが大切です。
それぞれの社員の日本語能力を確認し、スキルアップを図る
ひと口に「外国籍社員」と言ってもそのバックグラウンドはさまざまです。国籍や仕事の経験にも違いがありますし、日本語の能力にも差があるでしょう。
日本のビジネスの現場で活躍してもらうには、日本人とのコミュニケーションスキルが必要になるため、外国籍社員に日本語のスキルを伸ばしてもらうことが必須です。外国籍社員向けの研修に日本語習得のプログラムを組み込み、必要なスキルを習得してもらうと同時に、研修中に一人ひとりの日本語の能力を把握し、それぞれに今後の日本語学習の課題を伝えるようにします。
現場でのコミュニケーション力アップを図る
日本語での日常会話は問題のない社員でも、専門用語が分からないため現場で戸惑ってしまうというケースがあります。
例えば建築現場の仕事に従事する場合には、現場で使われる建築用語が分からないと、作業がスムーズに進まない状況になりかねません。また、作業手順の変更や危険回避のための指示などが日本語で伝わらないと、作業員の安全を確保することも難しくなります。
専門的な分野に外国籍の社員を迎える場合は、専門用語を日本語で学んでもらい、現場でのコミュニケーション力アップを図る必要があります。
外国籍社員向け研修に必要な内容
それでは、外国籍向けの社員研修はどのような内容で、どのような順序で進めればよいのでしょうか?
基本的には、まず「日本の文化やマナー」について学んでもらい、次に「ビジネス日本語研修」に進んでもらうのがスムーズです。しかし、研修を受ける外国籍社員の知識や能力によって、柔軟に研修の順番を変えてもよいでしょう。
新人のスタッフについては、別途、新入社員研修も行う必要がありますが、ここでは一般的な異文化?マナー研修と日本語研修の内容について見ていきます。
異文化?ビジネスマナー研修
- あいさつ、身だしなみ、名刺交換
日本のビジネス現場でのあいさつの仕方、身だしなみ、名刺交換についての説明やロールプレイングを行います。一般的なお辞儀の仕方やあいさつで使われる言葉などを具体的に紹介し、練習します。ます。また、先述のとおり、日本の名刺交換は海外とは異なる慣習があるため、手順を丁寧に教えなければいけません。 - 基本的な仕事の進め方
「報告?連絡?相談」といった基本ルールや、上司から部下への指示、部下から上司への報告の仕方など、一般的な仕事の流れを伝えます。 - 日本人の価値観、ビジネスにおける慣習
例えば、日本では交渉の最後に「考えておきます」と言われても、実際に再考して検討するという意味ではなく、やんわりと断っている場合があります。そういった日本特有の慣習を知ってもらいます。
日本語ビジネスマナー研修の導入事例はこちらの記事をご覧ください。 → ケリーサービス(パーソルコリア) 様 |
ビジネス日本語研修
- 電話での応対、あいさつ
基本的な電話での応対やあいさつが日本語でできるようにします。伝わる発音やアクセントを身に付けてもらいます。 - 社内外で使用する基本表現
「報告?連絡?相談」やアポイントメントなどで使用する基本的な表現をレクチャーします。 - 商品の説明
商材を扱う仕事では、商品の説明が日本語で行えるように指導します。 - マニュアルの読み方、報告書の書き方
基本的な読み書きについても学んでもらいます。社内で使用するマニュアルの読み方や報告書の書き方の習得を目指します。
日本語研修においては、上記のようなプログラムを通じて日本語の基礎を固めつつ、その後のフォローアップ研修、レベルアップ研修などで、より実践的なコミュニケーション力を身に付けてもらうとよいでしょう。
ビジネス日本語研修の導入事例はこちらの記事をご覧ください。 → 安藤ハザマ 様 → ケリーサービス(パーソルコリア) 様 |
外国籍社員向け研修で失敗しがちな点、成功のポイント
外国籍の社員研修は一般の社員研修とは異なる難しさがあり、うまくいかないケースもあるようです。ここでは失敗しがちな点や成功のポイントを見ていきます。
失敗しがちな点
- 理解度に差が出る
すべての外国籍社員に対して同じ内容の研修を一斉に行った場合、出身国のバックグラウンドが異なるため、理解の度合いにバラつきが出ることがあります。研修の理解度は、日本の滞在歴はどのくらいか、普段どのくらい日本文化に触れているかといったことにも左右されます。 - 一人ひとりの弱点が克服できない
多数の受講生を相手に講師1人が一方的にレッスンする形式では、一人ひとりの弱点の克服に結び付かない場合があります。 - 異文化が理解できない
日本の文化を知らずに日本語能力だけを高めていこうとしても、「なぜこのシチュエーションではこうした日本語表現を使うのか」といったことが理解できない可能性があります。
成功のポイント
- 出身国の文化を理解したうえでカリキュラムを組み立てる
あらかじめ外国籍社員の出身国を把握し、それぞれの国の文化を理解したうえで、研修時にどういった誤解が生じやすいかを考慮したカリキュラムを組むのが理想的です。その際、日本滞在歴もあわせて確認しておきます。 - 少人数のレッスンやフォローアップ研修を検討する
一人ひとりの受講生の弱点を改善できるよう、少人数のクラス編成にしたりフォローアップ研修をしたりするなど、弱点克服のためのプランを立てるのがおすすめです。 - 異文化理解のための研修も取り入れる
日本の文化について理解してもらうため、海外と大きく異なるとされる点を中心にレクチャーするのも効果的です。また、日本の歴史や文化に触れられる施設を訪れるといったように、アクティブなレッスンを取り入れるのもよいでしょう。
きめ細かなフォローで日本の言葉や文化への理解を深めてもらう
外国籍向けの社員研修では、各社員の文化的背景や日本語のスキルに合ったきめ細かな対応を行うのがベスト。できる限りパーソナライズされた研修を行い、日本語のスキルも伸ばしてもらいたいものです。さらに、受講生のフォローがしやすい研修プログラムを取り入れていくことが大切でしょう。
グローバル化が進む現在のビジネス環境においては、日本人向けの英語研修だけでなく、外国籍社員向けの日本語研修の重要度も増しています。業種にもよりますが、外国籍社員は、自社の商品やサービスについて外国語でアピールするといった役割を担うことも少なくありません。効果的にアピールするには、日本のモノやコト、そしてもちろん日本語の理解は必須となります。そういったインバウンド対策としても日本語研修のニーズが高まっている今、ご紹介した内容を参考に、ぜひ効果的な研修を行ってください。
日本人向けの英語研修だけでなく外国人向けの日本語研修も提供している研修会社はほとんどありませんが、神田外語キャリアカレッジのように両方行っている会社もまれにあります。こういった語学研修について、豊富な実績とノウハウのある専門のサービスを利用するのも有効です。
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