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仲代表の「グローバルの窓」

仲代表の「グローバルの窓」

第75回 The contract needs to be reset due to market trends.?(市場動向を理由に契約書はリセットするしかない)

2024.08.26

部下の悩み

 シンガポールはよくシンガポール株式会社と言われます。国が率先して産業、経済を牽引しているからです。前回「リー?クアンユーの涙」のことを書きました。マレーシアから追い出されたシンガポールは、独立時点からひたすら経済へと走り続けました。政治的には一党独裁。経済的には外資解放。「明るい北朝鮮」と揶揄されることもあります。

 そのシンガポールの経済を推進しているのが経済開発庁(EDB)です。実は会社では私がシンガポールに赴任する2年ほど前にEDPとエネルギー事業に関し、包括契約を結びました。実証試験等に取り組むため、我々は人材と実証試験に投資し、その成果見合いでEDPがファンドを供与するというものです。期間は3年でしたが、その期間が終了するのが私の赴任日から半年後の3月末でした。

 赴任当初、ゴパルは暗い顔をして相談があると言って私のところに来ました。「実はトップレベルでEDPと包括契約を結んでいます。人材は3年間で15人のエネルギー関係のスタッフの雇用をコミットしています。当初は5人からスタートし、8人まで増やしましたが、市場が思うように進まず、現在はあなたと私とインド在住スタッフの3名だけという状況です。しかし、EDPは他の事業でも大きく関わり、トップ同士も良好な関係にあるので、エネルギー事業でケチをつけるとたいへんな事態を招いてしまいます。コミットメントを満たすまであと半年しかありませんが、どう考えても15人ものスタッフを雇うことはできません。どうしたらいいでしょうか」と言うのです。たしかにこれはセンシティブな案件です。全社的にもシンガポール政府との関係の観点からも悩ましい問題でした。

 私はゴパルに、「まず、半年後に契約を履行することは不可能。ということは、交渉して契約をリセットするしかない。しかし、理由もなしにリセットはできない。基本線は市場を理由にしよう。電力自由化による市場開放、需要の動きが予想をはるかに下回り鈍いので、コミットしたとおりの人員計画、実証試験計画に着手できない、ということを説明して交渉しよう。実際の市場状況もそうなので、データや状況証拠は集められるはず。それから、足しげく通って、EDPの担当者を味方につけよう。契約のリセットを目標とし、この半年間を交渉期間として進めよう」と言いました。

毎週訪問の奏功

 ゴパルと私のEDP通いは赴任当初から始まりました。一週間に一度訪問し、当方の活動状況や市場動向などを説明しましたが、EDPの方でも我々との意見交換や情報共有を求めていました。10月から3月まで半年は続けたでしょうか。当方のスタンスは、「市場動向を窺いながらエネルギー事業を推進していく、していきたい」というものでした。こちらの意欲をアピールしながら、しかし、市場ニーズや規制などを勘案すると簡単に投資には踏み込めなというニュアンスを醸し出しました。EDPの担当者は20歳代のエリートでしたが、我々の話によく耳を傾けてくれました。毎週、データを用意し市場動向を中心にやる気をにじませながら説明を行いました。EDPは街のど真ん中にある高層ビルで、オフィスからの眺めは抜群でした。国会議事堂やマリーナベイサンズが見え、この国の中枢と仕事をしていることを絶えず感じました。

 EDPの彼とは会うたびに意気投合し、こちらが投資に踏み込めないのは市場状況が一番の要因、と理解を示してくれるようになりました。我々は、シンガポール政府がこういうことをやってくれたら、もっと積極的に推進できるのに、と簡単には実行できない要望もぶつけるようになりました。そうした中、2月にEDPのエネルギーイノベーションプロジェクトの受注が確定しました(第73回ご参照)。我々が積極的にエネルギー事業を推進している何よりの証となり、交渉に弾みがつきました。

 3月末が迫る中、彼は我々の主張にすっかり同調し、契約のリセットの段取りまで手ほどきをしてくれました。彼にとっても上からどうなっているんだと突かれていたようで、我々が説明した内容や提供したデータを使い、EDBの上を説得してくれたようです。こうしてゴパルの最大の懸念は払拭され、無事に契約リセットにこぎ着けることができました。

シンガポールの官僚は賄賂をもらわない?

 ちなみにシンガポールでは、小さい時から優秀な人材が選抜され、国の予算で留学をさせて官僚を育成します。何の資源もない国にとって人材は最重要リソースの一つなのです。他の東南アジアの国では賄賂が横行していますが、シンガポールでは賄賂はほとんどありません。その理由は、小さい時から国から選抜され、国の費用で育成されること、もう一つは、官僚の給料が民間の給料より十分に高いからです。つまり、シンガポールの官僚は、国が戦略的に育成し、地位、名誉、お金を兼ね備えた国のエリートなのです。悲壮な想いで国をつくったリー?クアンユーの苦心が官僚育成の面にも現れています。EDPとの交渉で出会った彼は、こちらのポイントを本質的に捉え、柔軟に考えをめぐらす方でした。シンガポールのエリート官僚の良質に向き合いながら、すがすがしい交渉ができました。

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