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最高視聴率!スタジオドラゴン『涙の女王』が『愛の不時着』超え!韓国サムスン/CJグループが陰の立役者か!

2024.07.30

最高視聴率!スタジオドラゴン『涙の女王』が『愛の不時着』超え!韓国サムスン/CJグループが陰の立役者か!

韓国恋愛ドラマ『涙の女王』。最終回(2024年4月28日、現在Netflix配信中)が歴代最高視聴率24.9%を記録。『愛の不時着』(2019年)と『涙の女王』の2つの大ヒット恋愛ドラマを制作したスタジオドラゴン。同社の戦略と、世界的な「韓流」(はんりゅう)ブームの底流を探ってみます。

スタジオドラゴン『涙の女王』が『愛の不時着』超え!

韓国恋愛ドラマ『涙の女王』。最終回(2024年4月28日、現在Netflix配信中)が最高視聴率24.9%を記録。世界的な大ヒットドラマ『愛の不時着』(2019年)を抜いて、ケーブルテレビ局tvNの歴代最高視聴率を達成しました。

ショート動画サイトTikTokには、最終回を見ながら、自宅リビングや飛行機の中で号泣している、世界の視聴者(特に女性)の映像があふれています。(若干のネタバレになりますが)第15話(最終回直前)の最後の「横断歩道」のシーンで、「一体何が起こったのか??」というキツネにつままれたような視聴者のリアクション、その直後の「悲鳴」(”oh no!”)に近い反応を撮影した多数の動画も拡散されています。

「こんなにも土日が待ち遠しいのは初めて…」「圧倒的にすき。本当に今日は夜がこないでほしい…終わっちゃう 泣」「涙の女王が終わると思うだけだけでロス」「終わるのめっちゃ悲しい これのおかげで頑張れてたのに…」。番組が最終回を迎えたことに対する多くの「喪失感」のコメントがネット上に掲載されています。

『涙の女王』(Queen of Tears)は、財閥三世の令嬢(キム?ジウォン氏)と田舎出身の頭脳明晰な青年(キム?スヒョン氏)という破格の格差婚カップルが離婚寸前に陥るも、思いも寄らない危機に直面したことから冷え切った2人の関係が再び動き始めていくというロマンティックコメディ。

対して、『愛の不時着』(Crash Landing on You)は、パラグライダーで竜巻に巻き込まれ、北朝鮮の非武装地帯に不時着してしまった韓国の財閥令嬢/実業家 (ソン?イェジン氏)と、彼女を助けた北朝鮮の軍人(ヒョンビン氏)が主人公。身分を隠してともに生活しながらふたりが惹かれあっていく、韓国を越えて世界的なブームを巻き起こした「極上のラブストーリー」。

この『愛の不時着』と『涙の女王』の両作の脚本を手掛けたのが、韓国二大脚本家とも評される人気作家パク?ジウン氏です。そうしたこともあり、(後作の)「涙の女王」では、出演陣や演出、ちょっとしたセリフに至るまで「愛の不時着」などのパク?ジウン作品を連想させる小ネタが要所に散りばめられ、ファンの心をくすぐる「おしゃれ」な仕掛けが施されています。

ドラマ『涙の女王』(最終予告編)Netflix

韓国最強のドラマ制作会社「スタジオドラゴン」

歴代最高視聴率を記録した『涙の女王』を制作したのが、制作会社「スタジオドラゴン」(STUDIO Dragon)。同社は、韓国エンターテインメント企業CJ ENMグループ傘下のドラマ制作会社です。もともとCJ ENMのドラマ事業部門として設立され、同じグループ内のケーブルテレビ「tvN」のドラマを多く制作。『トッケビ?君がくれた愛しい日々?』『ミスター?サンシャイン』『愛の不時着』『ヴィンチェンツォ』『涙の女王』など数々の人気ドラマを制作/提供。同社のキャッチコピー「Universal Emotions, Original Stories」(普遍的な感情、オリジナル?ストーリー)からも、唯一無二の感動ドラマを制作する意気込みが伝わってきます。

スタジオドラゴンは、(前述のとおり)2016年5月にCJグループ傘下のCJ ENMのドラマ事業部門として設立され、2017年に韓国KOSDAQ市場に上場。2023年の売上高は7,530億ウォン(860億円)。キム?ヨンギュ氏とキム?ジェヒョン氏が共同代表を務めています。

スタジオドラゴンの親会社「CJ ENM」は「tvN」「KCON」「Mnet」も運営!

このスタジオドラゴンの親会社が、韓国のエンターテインメント/ライフスタイル巨大企業の「CJ ENM」(シージェイ?イーエヌエム、CJ ENTERTAINMENT AND MERCHANDISING)。1995年以降、メディアコンテンツ、音楽、映画、舞台、アニメ等の幅広い領域にビジネスを拡大。アカデミー作品/監督/脚本賞『パラサイト 半地下の家族』(2020年)や、『ミスター?サンシャイン』、『トッケビ?君がくれた愛しい日々?』などの人気映画/ドラマを企画/制作/配給。また、最高の韓国カルチャー体験を世界中に提供するために、「KCONコンベンション」や「Mnet Asian Music Awards」といった音楽アワードも運営しています。

「KCON」(ケイコン、CONはconvention)とは、K-POP、ビューティー、ファッション、フード、ドラマなどの韓流文化コンテンツが体験できる「フェスティバル」。「Mnet」(エムネット)とは、K-POP系音楽専門チャンネル(ドラマ/バラエティも含む)。同チャンネルで放送される公開オーディション「PRODUCE 101」(プロデュース ワンオーワン)は、韓国や日本のK-POPファンに特に人気が高い番組です。

その「CJ ENM」が運営するケーブルテレビチャンネルが「tvN 」(Total Variety Network、2006年10月9日開局)。主な視聴ターゲットは20代から40代の男女で、ドラマやバラエティなどを放送。

このように、ドラマ/映画、K-POPなどの人気作品/現象を語る場合、必ずCJ(シージェイ)グループの名前が登場します。つまり、『韓流』(はんりゅう)の現在の世界的なブームに、CJグループが密接に関係していることがわかります。「韓流」とは、韓国ドラマ/K-POP/フード/コスメなどの韓国大衆文化の流行を意味する総称。

サムスン/CJグループは『韓流』ブームの「陰の立役者」!

CJグループ (創業は1953年)は、1993年にサムスングループ(韓国最大財閥)から分離?独立した中堅財閥。製糖業が祖業(CJは「第一製糖」(Cheil Jedang)に由来)で、現在、食品や医薬品、食品流通、メディア事業を展開。CJグループの現会長イ?ジェヒョン氏は、サムスングループ創業者のイ?ビョンチョル氏の孫に当たります。なお、イ?ビョンチョル氏は早稲田大学(政治経済学部)で学んだ経験があり、日本とのつながりも深いとされます。

(後述のとおり)韓国の世界的人気アイドルグループBTS(防弾少年団)や、映画「パラサイト半地下の家族」(2020年アカデミー作品/監督賞)のポン?ジュノ監督の世界進出を後押ししたのも、このCJグループなのです。

(あくまでも仮説ですが)現在の韓流ドラマのヒットやK-POPの世界的な人気現象の背後に、CJグループ、CJ ENM、スタジオドラゴン、Mnet、KCON、tvNなどの巨大なエンターテインメントのビジネスネットワークが存在し、その源流をさかのぼると、韓国最大財閥サムスングループにたどりつきそうです。

朝日新聞GLOBEウェブサイト「GLOBE+」(2021年3月19日)に、清水大輔氏(朝日新聞記者)によるインタビュー記事が掲載されています。インタービューの相手方は、CJ社の動向に詳しいライターのコ?ソンヨン氏。そのなかで、コ?ソンヨン氏が「CJというフィルターを通すことで韓流が見える」と指摘しています。彼の洞察を簡単に確認しておきましょう。

ポン?ジュノ監督のアカデミー賞4冠『パラサイト』も、CJグループが支援

ポン?ジュノ監督(当時50歳)の『パラサイト』はアカデミー賞4冠(2020年)を達成。アカデミー賞の作品部門が外国語映画に与えられた史上初の快挙を成し遂げました。

時間をさかのぼると、CJグループは、ポン?ジュノ監督がまだ30代前半だった頃に協力関係を築いて、「殺人の追憶」(2003年)以降、制作を支援。ポン?ジュノ監督の「スノーピアサー」(2014年)でも、クリス?エバンスといった大物俳優を起用し、撮影も海外で実施。

このとき、CJが中心となることで、当時の韓国映画史上最大の450億ウオン(51億円)が投入された「グローバル映画」が生まれたのです。のちの映画『パラサイト』のアカデミー賞獲得は、CJグループの支援なしではあり得なかったといえます。

CJは、映画ビジネスをスピルバーグ監督のドリームワークスから学んだ!

現在においても、CJグループ内には、「文化がなければ国がない」という創業者イ?ビョンチョル氏の哲学が浸透しているとされます。CJは、資源や内需に乏しい韓国にとって、食品だけ扱うのでは限界があると考え、エンターテインメント?ビジネスに経営資源を投入していきました。

そのCJは1995年にスティーブン?スピルバーグ監督らが米国映画製作会社ドリームワークスを設立する際に3億ドル(当時の300億円)を投資。主要事業の食品とまったく関係のない巨額投資だったため、社内でも反対があったとされます。CJが「戦略的」であったのは、このとき、ドリームワークスから映画の配給、マーケティング、財務?管理などのノウハウに関して支援を受けられるようにしたことです。

映画産業が当時、さほど発達していなかった韓国において世界最大のエンタメ大国米国から技術/ノウハウを学ぶルートを構築できたのです。その後、CJ ENMはドリームワークスとのやりとりを皮切りに、ハリウッド(米国映画界)にどんどん食い込んでいきました。

「BTS」のアメリカでの活躍の影に、CJの「KCON」の存在

2012年、アメリカからスタートした、韓国文化を丸ごと体験できる、CJ ENMが主催する「K-CON」。2014年のイベントには、後に世界的な人気アーティストになるBTS(防弾少年団)も出演し、彼らのパフォーマンスはアメリカの聴衆に大熱狂で迎え入れられました。

かつて、CJ会長のイ?ジェヒョン氏はエンターテインメント事業に参入した際、次のように語ったとされます。「世界中の人たちが年に数本は韓国映画を見て、月に何度かは韓国料理を食べ、週に何度かは韓国ドラマを、そして毎日K-POPを聞くようになれば」。

現在の「韓流」の世界的なブームの背後に、「文化がなければ国はない」というサムスングループ創業者イ?ビョンチョル氏の哲学を、彼の孫であるCJグループの現会長イ?ジェヒョン氏が具現化している長期的な戦略が存在しているように思えます。

新たなクリエーターを発掘するシステム、「O’PEN」

ここで、CJグループの有力ドラマ制作会社スタジオドラゴンに話を戻し、同社の「強み」を整理しましょう。

第1に、スタジオドラゴンの強みは、コンテンツの企画?開発から資金調達、配給、プロデュース、流通までの全てのプロセスを「一気通貫」(いっきつうかん)でコントロールする韓国最大規模のドラマ制作会社であることです。

第2に、200名を超える優秀なクリエーターを確保している点も大きな強みとなっています。脚本家を含む優秀なクリエーターがいなければ、人気ドラマを作り出すことはできません。

第3の強みは、新人脚本家の発掘/育成システムです。(第2の強みに密接に関係しますが)スタジオドラゴンの戦略に詳しいライター/翻訳家桑畑優香氏は、同社の強みのひとつとして、新人作家を発掘/育成する創作者支援事業「O’PEN」(オープン)の存在を指摘しています。これは、親会社のCJ ENMと共同で継続している新人育成システム。「O’PEN」には、脚本家(pen)を夢見る人たちに開かれた(open)創作空間と機会 (opportunity)を提供するという意味が込められています(『現代ビジネス』2020年11月21日記事)。

新人脚本家育成:個人共同執筆室を備えた空間「O’PENセンター」を運営

この育成システムには、脚本を公募し、最終的に選抜された作家たちに創作支援金や国内有数の演出家による人材育成を行うプログラムが含まれています。たとえば、専門家の特別講義や刑務所、消防署、国立科学捜査研究院などの現場取材も支援。さらに、「O’PEN」の物理的な拠点として、ソウル市内に個人共同執筆室を備えた空間「O’PENセンター」を運営し、作家たちが完全に創作に集中できる環境を提供(上記『現代ビジネス』記事)。

また、作品のプレゼンテーションやビジネス?マッチングイベントを毎年開催し、作品を業界関係者に披露する場も設定。この場合、創作物に対するすべての著作権はクリエイターに帰属。そうした創作物に関して、CJ ENMやスタジオドラゴンと契約締結する義務もなし。

つまり、O’PEN事業から誕生したクリエイターたちは、自分たちの選択で、様々なプラットフォームでデビューに成功し、幅広い活動を続けているのです。CJ ENMやスタジオドラゴンが提供しているとはいえ、「O’PEN」は韓国のドラマ産業全体の発展を射程に収めた、新人作家発掘の特別システムだといえます(上記『現代ビジネス』記事)。

こうした強みを最大限に活用し、次々に世界的な人気話題作を世に問い続けているのが、現在の「スタジオドラゴン」なのです。

スタジオドラゴンとNetflixとの戦略的提携

名作/話題作の供給という結果を着実に残しながら、スタジオドラゴンは、世界最大の動画配信企業のNetflixと戦略的に提携するという次の重要なフェーズ(段階)に移っていくのです。

2019年11月、CJ ENMと傘下企業スタジオドラゴン(STUDIO Dragon)が、世界最大の動画配信企業Netflixと戦略的パートナーシップを締結。それは、複数年に渡るコンテンツ製作および配信合意を目的としたものです。2020年からスタートする3年間のパートナーシップ契約の一環として、スタジオドラゴンと同社に所属する敏腕クリエイターたちが、オリジナルシリーズを製作し、それらの作品はNetflixを通して世界中に配信されることになりました。

CJ ENMのCEO、ホ?ミンホ氏は「Netflixとの提携により韓国の作品を通じて新しい体験と価値観を世界中の視聴者に」届けるというコメントを発表。またスタジオドラゴンCEO、ジニー?チョイ氏は「今回の発表は、韓国流のストーリーテリングと優れた製作手腕が世界中の視聴者に愛されている証であ」ると、述べています。

Netflixも、「今回の提携は、韓国エンターテインメントに対する我々の熱意を実現するものであり、韓国そして世界中のNetflixメンバーに、より高品質な韓国ドラマをお届けできるようになります」(コンテンツ最高責任者のテッド?サランドス(Ted Sarandos)氏)、「我々はCJ ENM、Studio Dragonとの提携を大変嬉しく思い、今後長きに渡って実り多い関係が築けることを楽しみにしています」(同社取締役会長のリード?ヘイスティングス(Reed Hastings)氏)というコメントを発表。

特筆すべきは、世界最大の動画配信企業Netflix社の創業者/取締役会長のヘイスティング氏とコンテンツ最高責任者のサランドス氏の二人が、スタジオドラゴンとの提携に対してコメントを出していることです。このことからも、スタジオドラゴンの現在の影響力の大きさと、同社がNetflixのグローバル戦略にとって極めて重要な存在であることを推察できます。

Netflixの「巨大動画配信ネットワークと大規模製作予算」という「後ろ盾」

この提携の一環として、2019年12月時点でNetflixはスタジオドラゴンの株の4.99%を保有し、CJ ENM(58.18%)に次ぐ大株主になっています。一方で、スタジオドランゴン側は、Netflixが提供する「世界最大の動画配信ネットワーク」(ユーザー数2.7億人)と「巨額の資金源」の後ろ盾を得たことになります。

スタジオドラゴンにとっては、Netflixを媒介にすれば、各国放送局との煩雑な交渉の必要がなくなり、一挙に作品を世界同時公開することが可能となりました。さらに、Netflix社のコンテンツ製作総予算額(2024年)は約170億ドル(2.6兆円)にのぼるとされます。スタジオドラゴンとしては、各作品の製作にあたってのスポンサーの獲得作業や資金回収などの予算面での不安が、Netflix社の後ろ盾によって一挙に解消されたのです。

これからも、韓国ドラマやK-POPの世界的な人気は続くことでしょう。そうした韓流の隆盛を分析するときに、CJグループがどのような影響を及ぼしているのか、そのフィルターを意識すると、表面的な流れを後押ししている底流が見えてくるのではないかと考えます。

「アジアの龍」というニックネームを持つスタジオドラゴン。同社が、想像力とクリエイティビティを尽くして、世界市場でどこまで躍進し続けるのか。世界やアジアの多くのファンが、スタジオドラゴンの次の名作/話題作を待望しています。

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