SNSで「世界一濃い」抹茶ジェラート「No.7」がバズっています。浅草(東京都台東区)の老舗銘茶問屋「壽々喜園」(すずきえん)と、静岡県で抹茶スイーツを展開する「ななや」(静岡県静岡/藤枝/島田市)のコラボ商品。「No.7」の概要、世界的な抹茶ブームやその背景を紹介します。
?世界的に人気!浅草「壽々喜園」(すずきえん)の抹茶ジェラート
浅草(東京都台東区)の老舗銘茶卸売問屋「壽々喜園」(すずきえん)と、静岡県で抹茶スイーツを展開する「ななや」(静岡県藤枝市)のコラボショップ「壽々喜園 浅草本店」(2016年オープン)が、SNSの拡散により世界的に人気です。茶処(ちゃどころ)?静岡の抹茶を使った本格ジェラートを提供し、訪日外国人を含め、行列の絶えない人気店となっています。
ちなみに、「ジェラート」(gelato)は、イタリア語で「凍ったお菓子」。イタリア人の夏には欠かせないお菓子で、シチリア(ブーツ型をしたイタリアの「つま先」のすぐ先)ではブリオッシュ(バター/卵を素材にした丸いパン)に挟んで食べることもあるそうです。イタリアのフィレンツェ発祥とされ、街中には「ジェラテリア」と呼ばれるジェラート専門店が多く存在。またジェラートを作る職人は「ジェラティエーレ」と呼ばれます。
ジェラートとアイスクリームの違いは?
ジェラートは、アイスクリームよりも乳脂肪が低く、フルーツやコーヒー、チョコレート、ピスタチオなどを加え、さまざまな風味を生かしたアイスです。アイスクリームは、ミルクの風味をたっぷり味わうもの。一方のジェラートは、滑らかな口当たりと、濃厚な味わいを楽しむもの。
「壽々喜園」のお店があるのは台東区浅草3丁目。浅草寺の裏手、言問通り(ことといどおり)沿い。東京メトロ?都営地下鉄?東武スカイツリーラインの浅草駅から約800m。また、「ななや」も、青山学院大学近くで「ななや青山店」(東京都渋谷区)を営業しています。
余談ですが、「言問」(こととい)の名称の由来は、「ちはやぶる?」(神を導く枕詞。荒々しいという意味)で有名な、平安時代の歌人?在原業平(ありわらの なりひら、825年?880年)が京から左遷されて隅田川までやって来たときに詠んだ和歌です。「名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」(「都」(みやこ)と名前がつく都鳥よ、お前に問いたい。私が思いを寄せるあの人は、まだ都(京都)にいるだろうか)
?TikTokで抹茶ジェラートの動画が世界的に拡散!
「壽々喜園」(すずきえん)の看板新皇冠体育の抹茶ジェラートは、抹茶の濃さのレベルに応じて選択できます。そのレベルはNo.1~No.7の7段階。No.1が市販の抹茶ジェラートレベル。そこからスタートして2倍の濃さのNo.2、抹茶の渋みが際立つNo.3とレベルが上がっていきます。なかでも注目は、「世界一濃い」といわれている「No.7」(ナンバーセブン)。
ショート動画投稿サイトTikTokでも、訪日外国人が「ナンバーセブン」と、目を輝かせながらオーダーしている動画が紹介されています。洋の東西を問わずに「世界一濃い!」といわれたら、一体、どんな濃さで、どんな味なのか、試してみたいというのが、人情(にんじょう)、つまり、自然な心の動きではないでしょうか。なお、「セブン?アンド?スリー」(No.7 and No.3)というように、濃さのレベルを組み合わせて注文も可能です。
?抹茶ジェラートNo.7の「世界一の濃さ」がクセになる!
ネット上に、No.7の味を的確に説明する次のような記事がありました。茶道のときの「ウッ。ちょっと苦いな?」というお茶の味。ただ、「高カカオチョコレート」と同じように、その苦みになれると、だんだんと美味しく感じられクセになり、その後、No.4~No.6ぐらいの「普通の苦み」ではもう満足できなくなっていきます。
大人気の「No.7」は、静岡県藤枝市の山間地で採れた最高級抹茶(農林水産大臣賞受賞茶園)を使い、3年の月日をかけ完成させた自信作。業界でも「限界を超えた」と評される究極の味です。ひと口食べれば抹茶の圧倒的な風味と薫りが膨らみ、続いて心地よい苦みが広がってゆく「世界一の濃厚体験」だといえます。
「抹茶」の粉は髪の毛の太さの10分の1
ところで、「抹茶」は、お茶の葉を細かく挽(ひ)いて作られます。10ミクロン(髪の毛の10分の1の太さ)ぐらいの細かい粉にすることで、あのなめらかさや深い味わい、鮮やかな色み、たてたときのまろやかな泡などが楽しめます。
「抹茶色」とは、文字通りその「抹茶」を思わせる、やわらかな黄緑色のこと。この「抹茶色」が誕生したのは、今から約450年前、茶道という文化が完成した安土桃山時代。茶道が広まったことで、「抹茶色」も多くの人に使われるようになりました。現在も、和服やふろしきなどの和小物に、よく使われます。
抹茶色を含む緑色には、その人が自然体でいられ、リラックスすることを助けてくれる効果があります。そのため、心がオープンになり、開放感を与えてくれるそうです。抹茶の味以外のこうした「緑色」の効果も、「No.7」をはじめとする抹茶ジェラートの人気の要因といえそうです。
「7人の有志」由来の抹茶の濃さ「7段階」!
ところで、「ななや」の母体は「丸七製茶」(まるしちせいちゃ、[本社:静岡県島田市])。1907年に「7人の有志」が集まって始めた100年以上の歴史を持つ老舗企業です。「ななや」の名称はその「7」という数字に由来。そもそも、抹茶ジェラートを「7」段階に分けているのも社長の「遊び心」からとのこと。
日本では「ラッキーセブン」といわれ、数字の「7」には肯定的な印象があります。同様に、英語圏、たとえば、アメリカ文化でも、7という数字は一般的にポジティブで重要なイメージを持つとされます。
米国人にも「ナンバーセブン」(No.7)という名称がポジティブな印象!
米国でも、「7」は「幸運」を示唆する数字として広く浸透しています。多くの人が7は幸運と富をもたらすと信じており、そのため宝くじの番号選びなど様々な場面で好んで選択されます。
宗教的な文脈においても「7」という数字は強い存在感を示しています。聖書の中の「神は6日間で世界を創造し、7日目に休んだ」「七つの美徳」などがその例です。
ポップカルチャー(大衆文化)でも、「7」という数字が広く浸透している。例えば、「7つの曜日」「7つの大陸」など、映画、本、音楽においてもしばしば言及されます。スポーツでも、アメリカの有名な野球選手、ミッキー?マントルは背番号7を着用していました。そういえば、昨年、BTS(防弾少年団)のジョングク(JUNGKOOK)の楽曲「Seven(feat. Latto)」が世界的に大ヒットしました。
以上のように、観光で日本を訪れるアメリカ人などにとっても、数字の7はポジティブ性と幸運を暗示しており、商品名の観点でも、抹茶ジェラート「No.7」の人気の重要な要因になっているようです。
世界的なブームで、抹茶の輸出が伸びている!
こうした抹茶ジェラートの人気は、「世界的な抹茶ブーム」を象徴する事例ととらえてもいいでしょう。
「日本農業新聞」(2024年5月4日記事)によると、「緑茶」の輸出が伸びています。財務省によると、2023年の緑茶の輸出額は前年比33?3%増の292億円で、4年連続で過去最高を更新しました。主役は抹茶で、2023年には抹茶を主体とした粉末状緑茶が緑茶輸出量の約6割を占めました。健康志向の高まりから欧米などでは「スーパーフード」として抹茶が注目され、ラテやアイスなど飲料、スイーツ需要が拡大しています。
アメリカなどの海外では抹茶に含まれる「カテキン」など栄養価が高いことから、体に良い「スーパーフード」として注目されています。日本茶輸出促進協議会は、手軽に楽しめるコーヒー、紅茶に次ぐ第三の飲料として抹茶は定着しているとし、「海外では抹茶の特徴である渋味がポジティブに受け止められ、ラテやアイスなどで素材として使われている」と分析しています。
アメリカのセレブの間でもスーパーフード「抹茶」が大ブーム!
アメリカでも、抹茶、抹茶ラテ、抹茶サプリメントを楽しんでいることを「公」にしているセレブ(リティ)が多数います。
ブラッド?ピット、グウィネス?パルトロウ、ゼンデイヤ、ジェニファー?アニストン。
ジェシカ?アルバ、ジャスティン?ビーバー、セレーナ?ウィリアムズ。
セレーナ?ゴメス、カイリー?ジェンナー、ミランダ?カー。
テイラー?スウィフト、ライアン?レイノルズ、レディー?ガガ、ドレイク、マドンナ???もう枚挙に暇がありません。
こうしたセレブが、抹茶製品の間接的な超強力インフルエンサーになっていることは容易に想像がつきます。
米国スタバで「アイス?ラベンダー?クリーム?オーツミルク抹茶」が人気!
最後に、米国飲食情報サイト「TastingTable」の情報をもとに、米国スターバックスの人気抹茶系ドリンクを紹介しておきましょう。
一つ目が「アイス抹茶レモネード」(Iced Matcha Lemonade)。抹茶の風味が控えめで、抹茶のほのかな香りがする軽い飲ドリンク。抹茶の風味が強すぎない入口の飲み物として最適だとされます。
2つ目が「アイス?ラベンダー?クリーム?オーツミルク抹茶」(Iced Lavender Cream Oat Milk Matcha)。ラベンダーが抹茶を引き立てていて、オーツミルク(オーツ麦と水で作られた植物性ミルク)は繊細で、他のフレーバーとよく調和。SNSでは、このドリンクを「フルートループのような味」と表現されているそうです。「フルートループ(Floot Loop)」とは、米国のシリアルブランドの代名詞、ケロッグ社の黄?ピンク?紫などのカラフルな「甘くて癖になる味」のシリアルです。
先日、日本航空(JAL)の客室乗務員(CA)の方に、最近、国際線の機内食でも抹茶系のデザートが各種提供されているというお話を伺いました。
アメリカセレブとのコラボを含め、米国などの海外市場での「抹茶ビジネスの潜在性」はまだまだ大きいと言ってよいかもしれません。