第63回 “Let’s launch smartphone with waterproof function during the “Water Festival.” (水かけ祭のタイミングで防水機能付きスマホをローンチしましょう)
2024.03.29要旨:タイの水かけ祭にローンチ
日本企業との横並び思考をよそに、私はアジアでのスマホ販売を考えていました。調査、交渉の結果、タイとインドネシアに絞り、ビジネスを進めていくことにしました。まずはタイで、水かけ祭に照準を合わせました。防水機能が我々のスマホの一押し機能だったからです。再チャレンジのスタートです!
日本企業の横並び思考
MWC(モバイルワールドコングレス)という世界最大級のモバイル技術見本市がスペインのバルセロナで開催されます。10年前は毎年参加していましたが、今回は出張者を限定し、私は行きませんでした。
夕方、バルセロナにいる役員の方から私の携帯に電話が入りました。「シャープが展示会に参加して、積極的に商品をアピールしている。NECはなぜやらないのか」という趣旨でした。そんなお金もないし、ターゲット顧客をフランステレコムや大手オペレーターに絞っていましたので、お金があるならオペレーターとのビジネスでブランド投資に回したいと思っていました。
第一気にくわなかったのは、他の日本企業がやっているのになんでうちはやらないのか、という日本企業独特の横並び思考でした。逆に聞きたいくらいでした。なんで他の日本企業がやっていたらうちもやらないといけないのか?と。リソースを集中していかないといけない中、相変わらずの横並び思考です。役員がわざわざバルセロナから私の携帯にかけてくる内容か!?と叫びたいくらいでした。
アジア市場へアプローチ
第62回にも書きましたが、会社は欧州市場に打って出るリソースも覚悟も十分でないことがわかったので、私はアジアでやれないか考えていました。大々的に投資せず、小さくスタートするやり方です。アジアは欧州のオペレーターほど大きなブランド投資を求めてきません。
上司は私の意見を取り入れ、商品企画部と海外営業部でチームを組んでまずは市場調査を進めることになりました。インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムに絞り、2チームに分かれて現地入りし、調査を進めました。
それぞれのチームで検討した内容を突き合わせたところ、タイはディストリビューター経由で販売していくやり方で、アプローチしたディストリビューターがやる気満々でした。インドネシアとフィリピンはオペレーターに販売して展開するやり方で、ターゲットオペレーターと更に交渉する必要がありました。ベトナムは実際に出張したメンバーの意見として、市場が大きくなく、見合わせた方がいいとのことでしたので、ターゲット市場から落としました。
まずタイで販売開始!
3か国に絞ったあとは、実際の交渉です。フィリピンは、どうがんばっても価格が折り合わず断念しました。インドネシアは株主と交渉して、基本的合意に至りました。しかし、実務の責任者から明確な言質がなかなか得られず、時間をかけて交渉を続けることにしました。タイは交渉がトントン拍子に進み、まずは5千台を市場に投入することでビジネスを始めることで合意に至りました。シャープのオフィス機器を扱うディストリビューターでしたので、日系企業に対する信頼感を強く持っている会社でした。
スマホは防水機能が一つの売りでしたので、4月のタイ正月で行われる「ソンクラン」という水かけ祭に販売開始のタイミングを合わせ、アレンジを進めました。「ソンクラン」というのは、街で通行人同士が水をかけ合うお祭で、一年で最も気温の上がる時期ですので、暑さしのぎとしても親しまれています。
プロモーション会社とタイアップし、バンコクの高級コンドミニアムのフロアを借り切り、プールサイドでローンチングセレモニーを実施しました。水の中に入れても全く問題なし、ということでローンチング広告を展開しました。「ソンクラン」効果を期待したのですが、出だしは芳しくありませんでした。ブランド認知が低いのと価格が高いことが大きな理由でした。プロモーション投資はそれほどお金をかけていないので、大きな損にはなりませんが、最初から厳しい状況が続きました。