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マーケティング最前線!

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米国/世界の若者が熱狂する「テイラー?スウィフト現象」とは?

2024.01.04

『タイム』誌の「パーソン?オブ?ザ?イヤー 2023」

昨年(2023年)の12月6日、米『タイム』誌の「パーソン?オブ?ザ?イヤー 2023」(「今年の人」)に、米国の世界的人気歌手テイラー?スウィフト(Taylor Swift、以下「テイラー」)さんが選ばれました。「2023年は暗いことが多い年だった。世界は分断されている」。そうしたなか、「今現在、地球上でこれほど多くの人々を感動させることができる人物は他にはいない」というのがその理由です。同誌は、テイラーのライブ公演(「THE ERAS TOUR」(ジ?エラズ?ツアー))は大人気であり、開催場所が外交にも影響を与える米国の「ソフトパワー」(Soft Power)になっていると称賛しました。

「ソフトパワー」とは、ハーバード大学特別功労教授のジョセフ?ナイ(Joseph Nye)博士が提唱した概念。軍事力や経済力などの(物理的強制力を伴う)「ハードパワー」(Hard Power)に対して、その国が持つ価値観や文化的魅力で他国を魅了することによって理解や支持、そして共感を得る力。日本語で「文化力」とも訳されます。

日本のアニメやマンガも、ソフトパワーの例。なお、経済力は、軍事力の基盤になるものなので、一般に、ハードパワーに分類されます。

 カナダのトルドー首相が自国開催をテイラーに直訴!

2023年7月6日、テイラーが「X」(旧Twitter)で「2024年実施のワールドツアー『THE ERAS TOUR』に、英国/欧州の公演を追加する」とコメント。その時点で、カナダ公演が含まれていなかったため、ジャスティン?トルドー首相が、テイラーの投稿に直接返信。

Justin Trudeau(@JustinTrudeau) July 6, 2023

“It’s me, hi. I know places in Canada would love to have you. So, don’t make it another cruel summer. We hope to see you soon.” [Post] X.

 「私です、こんにちは。カナダにはあなた(の公演)を歓迎する場所がたくさんあります。だから、また『残酷な夏』(クルーエル?サマー)にしないでください。近いうちに会えることを期待しています」。トルドー首相は、アルバム発表後4年経過した現在、大ヒットしている彼女のシングル曲『Cruel Summer』(2019年)にかけて、追加公演場所にカナダを加えることを検討してほしいと「遊び心」たっぷりに伝えたのです。首相の働きかけが奏功し、2024年11月以降、同国のトロント(東海岸)とバンクーバー(西海岸)公演が追加されました。

<テイラー?スウィフト「THE ERAS TOUR Concert Film」 Official Trailerはこちら>

(音声が出ます) ↓↓

 このエピソードは、カナダ国民のために、首相自らが交渉に乗り出すほどの「ソフトパワー」をテイラーが持ち合わせていることを物語っています。

テイラーのソーシャルメディアでの巨大な影響力

テイラーのYouTubeチャンネル登録者数は5,570万人、Instagramフォロワー数が2.7億人、そして、「X」のフォロワー数が9,500万人(2023年12月時点)。彼女の巨大な影響力が容易に理解できます。彼女のファン「スウィフティー(ズ)」(Swifty、複数形はSwifties)の年齢層は幅広く、10代の若いファンから親子連れまでが含まれています。

なかでも、支持が厚いのが、ミレニアル(1981?96年生まれ)、ジレニアル(1990年代初頭?2000年代初頭生まれ)、Z世代(97?2012年生まれ)の「デジタル世代」。「ジレニアル」(Zillennials)とは、ミレニアル(Millennials)とZ世代(Gen Z)の間、つまり、1990年代初頭から2000年代初頭にかけて生まれた「年齢が限定された小さな世代(集団)」のこと。

彼女の社会的影響力は米国内の政治の分野にも波及。テイラーが、「ナショナル有権者登録デー」(2023年9月)に際し、Instagram(ストーリーズ)で2億人を超えるフォロワーに対して「選挙のための登録は済ませた?」と呼びかけました。アメリカでは、2024年に大統領選があり、若い有権者たちの登録が求められています。彼女の投稿により、3.5万人以上の新規有権者が短時間で米大統領選に投票するために登録したそうです。

世界ツアー「THE ERAS TOUR」の会場で熱狂の渦!

テイラーは、2023年3月17日から約5年ぶりとなる大規模世界ツアー「THE ERAS TOUR」を実施中。全米各地でチケットが完売し、(後述のとおり)開催都市に莫大な経済効果をもたらしています。同年7月に西海岸のワシントン州シアトルで行われた公演には2日間で14.4万人を動員。3時間以上に及んだ公演では、テイラーの現在から過去の「音楽を巡る旅」をテーマにして彼女のキャリアを複数の「時代」(Era)に分けて、44曲が披露されました。

このシアトル会場では、音楽、スピーカー、ビート、それに合わせて踊るファンの動きやジャンプが組み合わさり、会場全体を物理的に揺らせたと報じられています。

現在、テイラーのこうした大きな影響力は、米国では重要な社会(心理)現象として捉えられています。たとえば、米アリゾナ州立大学(ASU)は「テイラー?スウィフトの心理学 社会心理学の高度なトピック」と題するコースを開講。スタンフォード、ハーバード、ニューヨークの各大学でも、テイラーに関連したコースが開講されています。 

テイラーのアルバム世界総売上枚数は1.4億枚超え!

ここで、テイラー?スウィフトのプロフィールを確認しておきましょう。1989年12月13日生まれ(34歳)。アメリカ?ペンシルベニア州出身。グラミー賞を12度受賞。グラミー賞で最も栄誉のある「年間最優秀アルバム賞」を当時最年少(20歳)で受賞したほか、グラミー賞史上初めて女性ソロ?アーティストとして「年間最優秀アルバム賞」を3度受賞。デビュー時から今日までのアルバム世界総売上枚数は1.4億枚超え。180㎝の高身長とスタイリッシュなファッションは、とても「ステージ映え」します。

『スピーク?ナウ』(2010年)、『レッド』(2012年)、『1989』(2014年)、『レピュテーション』(2017年)の4アルバム連続で、史上初の初週100万枚以上(ミリオン)のセールスを記録。

彼女のラッキーナンバーは「13」(誕生日に由来)。SNSにもよく登場するペットは、メレディス(Meredith)とオリビア(Olivia)、ベンジャミン(Benjamin)の愛猫(あいびょう)3匹。

オペラ歌手だった祖母などの影響でカントリー歌手になることを子供のころに決意。11歳ぐらいからレーベルにデモテープを送り続け、16歳のとき、アルバム『テイラー?スウィフト』(2006年)でデビュー。カントリー?ミュージックとは、アコースティックギターやフィドル(バイオリンのこと)、バンジョーなどを使った、アメリカ南部地方発祥の音楽ジャンル。故郷や恋人を想った歌が多いのがその特徴。

リリース初週ミリオンの『レッド』(2012年)のリード曲が『We Are Never Ever Getting Back Together』(『私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない』)。この曲は、日本では恋愛リアリティ番組「テラスハウス」(フジテレビ系)の主題歌に採用され大ヒット。

アルバム『1989』(2014年)も初週ミリオンセラーを達成。同アルバムから『シェイク?イット?オフ』、『ブランク?スペース』、『バッド?ブラッド』の3曲がシングルチャートで1位を記録し、特に『シェイク?イット?オフ』は日本を含む世界各国で大ヒット。

音楽性として、アルバム『レッド』まではカントリー。『1989』からは完全にポップ路線にシフトチェンジ。結果として、より幅広い層から支持を獲得。歌詞は、恋愛や失恋など実体験をもとにした内容が多く、ファンの間では、彼女が失恋する度に彼女の新作への期待がふくらむという現象が発生。

(前述のとおり)アルバム『1989』(2014年)によって、カントリーからポップ?ミュージックに移行。彼女はその理由を次のようにコメント。「新しいサウンドやスタイルを試してみたいという願望が、その決断の大きな要因になった」「カントリー?ミュージック業界で創造的な息苦しさを感じ、アーティストとしてできることの限界を押し広げたいと考えた」。アルバムタイトル『1989』は、彼女の誕生年であり、カントリーからポップへの「再生」(rebirth)という意味を持っています。

テイラー?スウィフトの経済効果「テイラーノミクス」

次に、テイラーの「経済効果」(ハードパワー)についてみてみましょう。メディアでは「テイラーノミクス」(Taylornomics)とか「スウィフトノミクス」(Swiftonomics)と呼ばれています。

米ビジネス誌『フォーチュン』が、彼女の現在の「THE ERAS TOUR」は米国内だけで46億ドル(約6,410億円)という破格の消費支出を生み出す可能性を指摘。ちなみに、この消費額は、日本の食品メーカー「キッコーマン」やアパレル小売「しまむら」と同規模の売上高(年間)です。

「THE ERAS TOUR」を鑑賞するファン「スウィフティーズ」は、コンサートチケットの購入だけでなく、衣服、ホテル宿泊、移動、食事など、1人あたり1,300ドル(18.5万円)を支出。シカゴ公演時には、金曜日と土曜日には1晩平均44,383室が埋まり、ホテルの稼働率は平均96.8%と過去最高を記録(ホテルの一般の平均稼働率は40%?50%)。

ここで、テイラー?スウィフトの人気の要因を整理しておきましょう。第1がソングライティング能力と歌唱力。音楽専門家は、「テイラー自身の今の気持ちなんだ」と想像させるようなフィーリングを伝える曲を書くセンスと、ストーリーを語りキャラクター(歌の中の主人公)を作り出すセンスの両方を持っていると高く評価。また、彼女の歌は、母音と子音がどのように組み合わされるのかまで緻密に計算されているそうです。 

ファンがテイラーに感じる親近感と共感

第2の要因は、ファンがテイラーに感じている強い社会的?感情的絆。その背後にあるのが、恋愛や生き方に関する親近感や共感だと社会心理学的に分析されています。当該要因は、次の第3の要因にも密接に関係しています。

第3の要因が、彼女の主要なファンであるミレニアル世代とZ世代との関係性です。ミレニアル世代の多くが、テイラーと一緒に成長し、恋愛や大人への第一歩を踏み出したとき、彼女もまた同じような経験をし、それについて歌っていたのです。彼女の人生の物語は、「スウィフティーズ」の人生の物語と重なり合っているのです。

さらに、次のZ世代は、COVID-19のパンデミックの間、彼女のTikTokのコンテンツに触れ、音楽配信を通じて豊富な楽曲を知り、新たにテイラーの魅力を発見。このZ世代も彼女と同じような体験をたどり、アイデンティティの確立と成長に影響を受けたのです。こうした共感作用により、ソーシャルメディアを通じ「スウィフティーズ」という巨大なファンコミュニティーが形成されています。最近は、こうしたコミュニティーを「ファンダム」と呼びます。支持者を意味する「fan(ファン)」と、領地や勢力範囲などを意味する接尾語「dom」(ダム)の合成語です。

第4の要因は、テイラーの向上心が、多くのファンのロールモデルとなっている点です。彼女は、自分の価値観を貫き、目標に到達できることをファンに示す模範的な存在です。たとえば、彼女は自分の楽曲の「オーナーシップ」(著作権)を主張し、彼女の意に反して著作権が譲渡されてしまった旧譜の再録音盤を出すことに成功し、多くの若者に勇気やインスピレーションを与えています。

第5の要因は、ライブが素晴らしい点です。彼女の周りには素晴らしいライブパフォーマンスを作り出すための最高の人材がいます。試しに、TikTokで「#taylorswiftbridge」「#cruelsummer」

と入力しショート動画を検索してみてくだい。「ブリッジ」(bridge)とは、曲の中で主要な部分から一時的に離れ、異なるメロディやコード進行などを持った部分(J-POPの「Bメロ」に類似)で、曲の構造を変化させ、リスナーに新しい音楽的な要素を提供する役割があります。

人気曲『クルーエル?サマー』のブリッジの映像には、巨大なライブ会場が一体となり、テイラーとファンがノリノリで合唱している姿が映し出されています。特に、アメリカのファンは、高いお金を出しても、お釣りがくるくらいの質の高いライブを求めるのが一般的です。したがって、テイラーのライブはファンにとって「プラチナ?ライブ」といえるでしょう。

そのテイラーの『THE ERAS TOUR』が、2024年2月7日から10日まで、東京ドームで開催されます。当日は、日本の「スウィフティーズ」によって東京ドーム全体が沸き返ることでしょう。


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