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LAドジャース大谷翔平選手もかぶるベースボールキャップ「New Era」(ニューエラ)とは!

2023.12.13

野球帽「ニューエラ」はストリートファッションに欠かせない!

ストリートファッション。若者たちが集まるストリート(街中/路上)で自然発生的に生まれ、発信されるファッションのこと。何にも縛られずに自由に着こなしを楽しむのが、最大の特徴。その時代の社会情勢のほか、アートや音楽といったカルチャーや流行を反映しながら、人気ヒップホップアーティストやアスリートなどの影響を受け、自分のライフスタイルやアイデンティを表現する手段として、若者の間で特に人気が高いファッションスタイルです。

世界のストリートウェア市場規模は、2022年に1,876億ドル(28.1兆円)となり、今後、年平均成長率3.5%で拡大し、2028年には2,309億ドル(34.6兆円)に達すると予測されています。

ストリートファッションといえば、トップス(Tシャツ、パーカー)、ワイドパンツ、スニーカー、そして絶対はずせないのが小物アイテムとしての「キャップ」(野球帽)。数あるブランドのなかでも、抜群の知名度と人気を誇るヘッドウェア?ブランドが、米「ニューエラ」(New Era)です。英語の「New Era」は「新時代」を意味し、帽子業界に新しい革新を起こすという思いが込められているそうです。

さて、あのサッカー?アルゼンチン代表のメッシ選手をも超える、プロスポーツ史上世界最高額(10年で契約総額7億ドル、日本円で約1,015億円)でMLBロサンゼルス?ドジャーズに移籍を決めた大谷翔平選手。その大谷選手の影響で、「LA」のロゴの入ったドジャーブルー (Dodger blue、紺碧色)のベースボール?キャップが日本でも大人気です。あのキャップこそ、「New Era」の野球帽です。

現在、非上場会社のため正確な売上高は明らかにされていませんが、COVID-19危機以前にはニューエラ?キャップ社(New Era Cap Co.)の売上高は7.5億ドル(1,122億円)に達していたといわれています。同社のアパレル製品は現在、世界125カ国以上、1,000店以上の小売店で販売されています。 

MLB、NFL、NBAの公式ヘッドギアという正当性!

1920年、ドイツ系アメリカ人実業家、エルハルド?クック(Ehrhardt Koch)氏がアメリカ?ニューヨーク州バッファローで、家族から借りた5,000ドルを元手にして14人の従業員と一緒にE.クック?キャップ社を創業しました。初年度に6万個のギャッツビー?スタイルのキャップを生産。ギャッツビーキャップとは、狩猟用のハンチング帽の一種。

1922年、社名を、「新時代」を意味する、現在のニューエラ?キャップ社に変更。10年後の1932年、最初のベースボールキャップをデザイン。1934年には、初のプロ野球チーム「クリーブランド?インディアンス」用キャップの生産を開始しました。

現在、同社は、(後述のとおり)、アメリカの三大プロスポーツリーグである、アメリカンフットボールのNFL、ベースボールのMLB、バスケットボールのNBAのキャップを製造しています。

1932年、創業者エルハルドの息子ハロルド?クック(Harold Koch)氏が事業に参加。ハロルドは、米国でプロ野球の人気が高まる一方で、ファッションキャップの需要が薄れていることに気づいていました。そこでニューエラは、新しいアイテムの「ベースボールキャップ」を市場に投入したのです。それが、1934年にクリーブランド?インディアンスのユニフォーム用に生産され野球帽です。 

人気キャップ「59FIFTY」の由来は「生地番号5950」

現在「ニューエラ」の商品ラインで 最も代表的なスタイルのキャップ 「59FIFTY」(フィフティーナインフィフティー)は1954年に誕生しました。そのフォルム(形状)は当時から現在まで、ほぼ変わることなく受け継がれています。

ニューエラの人気のキャップがまさに「59FIFTY」。ツバ(ひさし)がフラット(平ら)で深めのかぶりが特徴的なベースボールキャップ。名称の由来は、当初採用されていたウール素材の生地番号「5950」に由来するとされます。1954年、ハロルド?クック氏(2代目)はニューエラのフィット型スタイルのキャップをデザインし、当時「ブルックリンスタイル」とも呼ばれていた、より現代的な外観を与えたキャップを生産し、「59FIFTY」と命名したのです。

 1950年代までに、同社は、(ニューヨークを拠点とした)ブルックリン?ドジャース(1958年に西海岸ロサンゼルスに移転。現在のLAドジャース)などいくつかの球団のキャップを生産するようになり、1993年以降はMLBの独占的な帽子供給パートナーとなりました。2010年代には、他のプロスポーツにも目を向けて、前述のとおり、現在ではアメリカンフットボールリーグ(NFL)とバスケットボールリーグ(NBA)の公式ヘッドギアを生産しています。

 ニューエラはMLBから、毎年開催されるウィンターミーティング(MLB関係者が一堂に会するイベント)で各球団に直接販売するよう招待され、それが、ニューエラがリーグと独占的な関係を築くための極めて重要な一歩となったとされます。さらに、1969年には、国家プロジェクトのアポロ11号の帰還クルー回収チームだった米国海軍航空母艦「USSホーネット」に乗組員用キャップを提供し、以降の同プロジェクトにも提供を続けました。そうした貢献により、アメリカ社会全体での認知度を高め、信頼を勝ち得ていったのです。

1972年、ハロルドの息子であるデビッド?クック(David Koch)氏が社長(3代目)に就任。数年後、デビッドの息子である4代目クリス?クック(Christopher Koch)氏が同社の伝統を引き継ぎ、祖父ハロルドと父デビッドの両者のもとで、ダービー製造工場(ニューヨーク州バッファロー)で働き始めました。

1980年代を通して、同社は大学スポーツ、AAA(MLB)、国際野球リーグ向けのヘッドウェアを生産し、スポーツファン向けにキャップの販売を開始。1993年にメジャーリーグベースボールのフィールド着用キャップの独占サプライヤーに指名され、(後述のとおり)1996年にはスパイク?リー監督と初めてカスタムメイドのファッション?ヘッドウェアを手がけ、ニューエラは創造性と、他のブランドとのコラボレーションの未来を切り開いていったのです。 

「スパイク?リー監督」のリスエストがストリートファッションの道を開いた!

映画『ドゥ?ザ?ライト?シング』(1989)や『マルコムX』(1992)など社会派監督として有名なスパイク?リー(Spike Lee)監督。1996年、彼が、ニューエラのCEOの(4代目)クリス?クック氏に電話をかけました。リー監督はMLBニューヨーク?ヤンキースの熱狂的なファンでした。

彼は、ヤンキースが出場するMLBワールドシリーズ観戦用として、自分のお気に入りの赤いジャケットにフィットするような「赤いヤンキースの59FIFTY」の制作を「ニューエラ」にリクエストしたのです。リー監督の要望は即座に受け入れられ、ワールドシリーズの3,000万人の視聴者に、「赤い59FIFTYキャップ」をかぶったリー監督が目撃されました。

リー監督の「赤い59FIFTYキャップ」に、ヒップホップ音楽界やストリートファッション界は大きな刺激を受けました。これをきっかけにして、ニューエラのベースボールキャップは、一流アーティストやファッションデザイナーなどが自らのイマジネーションを具現化するデザインの舞台となり、同時に、ファッションビジネスとストリートカルチャーの重要アイテムになったのです。現在でいう「インフルエンサー?マーケティング」の大成功例です。

MLBの公式キャップとして数十年の存在感を示したのち、ニューエラ社は全米最大のスポーツリーグとの独占関係を獲得することに狙いを定めました。2012年、同社はNFLの公式サイドライン?キャップとなり、続いて2016年にはNBAの公式コート着用キャップとなりました。その結果、(前述のとおり)ニューエラは、「米国3大プロスポーツリーグ」すべての公式ヘッドウェアの独占販売権を同時に持つ、スポーツ史上唯一のブランドとなったのです。

「NY」のロゴが一番人気!

ニューエラ?ベースボールキャップの成功要因を整理しておきましょう。第1が、「品質重視」のもと米国3大プロスポーツの公式ヘッドギアとしての「正当性」と「本物感」。第2が、カラーバリエーションなどストリートファッションアイテムとしての多様性とファッション性。ニューエラのデザインの多様性の証拠のひとつとして、現在、1シーズンで100件のコラボレーション商品があるそうです。

第3が、スポーツ、音楽、ファッションなどのセレブ/インフルエンサーを通しての人気やファッションスタイルの波及。特に、日本の場合、自分の好きな、つまり「推し」のアスリートや音楽アーティスト(例えば、K-POPアイドルなど)がかぶっているのを真似したくて、ニューエラのキャップを購入する若者が多いといわれています。

第4が、「NY」(ニューヨーク)、「LA」(ロサンゼルス)、「B」(ボストン)などのアルファベットのロゴが、アメリカ人の地元への愛着心を刺激すること。ちなみに、アルファベットのロゴとしては、ニューエラ?キャップ社の地元でもある「NY」が一番人気のようです。日本では、LAドジャースの大谷選手の影響で「LA」ロゴ入りキャップの人気がさらに高まることでしょう。

帽子で頭が入る部分を「クラウン」(crown)、帽子の日よけ、ひさし部分をブリム(brim、つば、バイザー(visor))といいます。ニューエラの帽子の「ブリム」(ひさし)には必ずゴールドまたはシルバーの(サイズを示す)「シール」が貼られています。多くの若者が直径5cmほどのその円形サイズシールを剥がさずそのままかぶっています。

その理由として、かつて、裕福でない家庭で育ってきた米国の若者たちが、自分のかぶっているニューエラのキャップが、偽物ではなく本物であることを証明するために、シールを剥がさないでそのままつけていたことに由来するといわれています。

つまり、「ニューエラ59FIFTY」の「ゴールドのステッカー」は、サイズを表示するタグ以上に、そうした若者たちにとって、その帽子が本物であること、つまり「正当性」を示すものなのです。その「シールを剥がさない着用スタイル」が「New Era」ファンの伝統として今日まで受け継がれているのです。

キャップの円形のサイズシールを付けたままかぶるのがスタイル!

ヒップホップなどの「ストリート系ファッション」は、社会的に弱い立場にいた人たちが「自分が自分であること」を受け入れ自尊心を高めていく過程で生まれてきました。ニューヨーク?ブロンクス(マンハッタン島の北側)の若者たちは、裕福なエリアであるマンハッタンで売れ残った商品を独自のセンスで組み合わせて身に着けるなど、限りある資源の中で工夫を凝らしたファッションを楽しみ、そうしたなかからヒップホップなどのファッションが生まれてきたのです。

ちなみに、日本では、ニューエラ?キャップのシールを、本人が知らないうちに、家族の誰かが勝手にはがしていたという「がっかり」エピソードも少なくないようです。

さて、ビジネス情報サイト「ブルームバーグ」の記事(2023年10月5日)は、ニューエラ?キャップ社が、現在、新規株式公開(IPO)の準備を進めており、2024年に上場する可能性があり、主幹事にJPモルガン?チェース社が選ばれたと報じています。このIPOのニュースは、人気ヘッドウェアブランドのニューエラ?キャップ社の次の「新しい時代」(New Era)が始まろうとしていることの「先触れ」だと解釈できます。

くわえて、MLBの2024年シーズンからのLAドジャースでの大谷翔平選手の大活躍により、「ドジャーブルー」(紺碧色)の「New Era」ベースボール?キャップの新しい伝説が必ず始まることでしょう。

「New Era」にとっても、そしてドジャース大谷翔平選手にとっても「新時代」を意味する2024年に大注目です。


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