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「バスケの王様」レブロン?ジェームズが宣伝担当! ティファニーとナイキのコラボ戦略

2023.06.19

「ティファニー」ブルーのスウッシュ、「エアフォース1」スニーカー発売!

ティファニーとナイキのコラボ戦略、「ティファニー×エアフォース1」スニーカーを例にとって、その狙いや、複数ブランドによるコラボ戦略の効果について、紹介します。

2023年1月31日(米現地時間)に、NBA(北米プロバスケットボールリーグ)が、ある動画をInstagramで公開しました。

その動画の主役は、プロバスケットボールのレブロン?ジェームズ選手(LeBron James、ロサンゼルス?レイカーズ)です。彼が、米国ニューヨーク市マンハッタンのスポーツ/エンターテインメントの殿堂「マディソン?スクエア?ガーデン」の地下のトンネルのような通路をゆっくりと歩いています。

ちなみに、レブロン?ジェームズ選手のニックネームは「キング」(王様)。現在、NBA史上最高のバスケットボール選手の1人として評価されています。あの「バスケの神様」、マイケル?ジョーダン氏としばしば比較されます。

動画では、レブロンは、黒いレザースリーブのジャケットを着ています。左胸には、ティファニーブルーの「スウッシュ」(Swoosh、NIKEのロゴマーク)が見えます。背中には、ティファニー社(https://www.tiffany.com)とナイキ社の名称と、同じくスウッシュのロゴがあしらわれています。

ティファニーブルーの「スウッシュ」!

最後に、動画はレブロンがはいているスニーカーを強調します。ティファニーブルーの「スウッシュ」をつけた「ティファニー×エアフォース1スニーカー」(https://www.tiffany.com/stories/tiffany-and-nike-air-force/)です。高級ジュエリーブランド「ティファニー」と、人気スニーカーブランド「ナイキ」のコラボレーションを象徴する商品です。

ナイキ「エア フォース 1」は、同社が誇る「永久定番モデル」として人気が高いシューズです。1982年、ナイキの象徴的テクノロジー「エア」(衝撃吸収)を初搭載したバスケットボールシューズとして誕生しました。

ナイキ「エア フォース 1」は米国大統領専用機のコールサインに由来

「エア フォース 1」のモデル名は、米国大統領専用機のコールサイン「Air Force One」に由来。そのすぐれたクッション性にほれ込んだNBAのトッププレイヤーたちに愛用されています。さらに、音楽などのポップカルチャーやストリートファッションとしても人気が広がっています。

今回のコラボレーションでは、ホイッスル(試合用笛)、シューホーン(Shoe Horn、靴べら)、シューブラシ、デュブレ(Deubre、ナイキにより考案された靴紐につけるタグ)も発売されます。そのシューブラシは、歯ブラシに間違えてしまう、といったコメントもインターネット上で散見されます。

もちろん、このレブロンの動画がバズったことは容易に想像できます。

ティファニーの親会社LVMHが主導するコラボレーション

今回のようなコラボレーションはティファニー社にとってかなり新しい戦略だとされます。

2021年1月にフランスの高級ブランド?コングロマリットLVMH(モエ?ヘネシー?ルイ?ヴィトン)が186年の歴史を持つアメリカのジュエリー企業ティファニー社を買収しました。

そうです。『ティファニーで朝食を』(1958年、Breakfast at Tiffany’s、オードリー?ヘプバーン主演)というように、映画のタイトルになるくらい「アメリカ」を象徴するジュエリーブランド。そのティファニーは、現在、ルイ?ヴィトンと同じフランスの企業グループに属しているのです。

その買収以来、ティファニーによる積極的なコラボ戦略がスタートしました。

「フェンディ」や「シュプリーム」ともコラボ!

この戦略をリードしているのが、買収と同時にティファニーの経営幹部に加わったLVMHの創業者兼CEO、世界的大富豪?ベルナール?アルノー(Bernard Arnault)氏の息子(30歳)、アレクサンドル?アルノー(Alexandre Arnault)氏です。彼のリーダーシップのもと、「フェンディ」(FENDI)、時計メーカーの「パテックフィリップ」(Patek Philippe)などの高級ブランドにはじまり、ストリートウェアの王様「シュプリーム」(Supreme)とのコラボレーションも実現しています。

今回のナイキとのコラボレーションの狙いは、ティファニーにとって初めての大規模なスポーツブランドとのコラボレーションであり、NIKEが擁する「より多くの若い消費者」との関係を構築することにあります。

「私たちは、ティファニーが過去200年にわたり、唯一のアメリカのラグジュアリーブランドとしてやってきたことを、少しずつでも現代の時代に生かし、文化的な時代精神の一部にしようとしています」アルノー氏はそう述べています。

アレクサンドル?アルノー氏は、現代のラグジュアリーブランドが成功するためには、常に斬新で創造的であることが重要だと考えています。高級ブランドは「文化的な会話の一部である必要がある。ここ数年、ティファニーは会話の一部になっていなかったような気がする」と彼は解説します。

アルノー氏の言葉を解きほぐせば、高級ブランド?ティファニーは、ミレニアル?Z世代の若い顧客の取り込みで苦労していたということです。

「ティファニー× ナイキ」の意外性

様々なブランドのコラボレーションがあるなかで、ティファニーとナイキのコラボレーションが評価されている理由は何でしょうか?

第1に、その「意外性」にあると分析されています。ダイヤモンドやジュエリーを連想させる伝統的な高級ブランドが、ある意味大衆性の強いスニーカー/スポーツウェアブランドのナイキとコラボしたことが、「予想外であり、話題性があった」ということです。

第2は、特にティファニーにとっての「新規顧客の開拓の実効性」です。ナイキとティファニーの顧客の属性(デモグラフィック)と商品の価格帯に大きな隔たりがある点がポイントです。このコラボによって、ティファニーは、Z世代などの若い顧客層を開拓できると期待しています。

ティファニーブルーの「スウッシュ」は映える!

第3に、デザイン面での強いインパクト?印象付けです。ナイキのロゴ「スウッシュ」(Swoosh、「ビューンと音をさせる」という意味)と、「ティファニーブルー」(トルコ石のような、緑味を帯びた青色)。一目でそれとわかる2つの極めて強力なシンボルを組み合わせたことからくる「強力な視覚効果」だといえます。いわゆる「映え」効果です。

今回のティファニーとナイキの提携は、ビジネスでいえば、「コ?ブランディング」(Co-branding)に当てはまります。これは、2つ以上のブランドを活用し、共有する製品やサービスを宣伝?生産するブランディングとマーケティング戦略です。「共創ブランディン」「共同ブランディング」とも呼ばれています。

顧客規模の拡大や技術的ノウハウの獲得

ここで、「コ?ブランディング」の一般的な効果をまとめておきましょう。第1に、相手ブランドの顧客への認知度が高まるため、自ブランドの顧客規模を拡大できることです。別の言葉でいえば、「新しい市場の開拓」です。今回のコラボによって、ティファニー社が、ナイキの顧客層であるミレニアル?Z世代の若者たちにアプローチできることが、その例です。

第2に、技術面のノウハウの獲得です。新しい専門的な製品、製品シリーズ、製品バリエーションを作ることができ、製造資源、技術、専門知識の共有が期待できます。また、相手ブランドと提携して、インパクトの強いイベントやキャンペーンを行うこともできます。それによって、両ブランドの認知度はさらに高まります。

第3は、リスクの低減です。自社のみで、新商品を発売し、新しい市場に参入し、新しいカテゴリーに挑戦することは、ブランドにとって大きなリスクになります。しかし、新しい市場やカテゴリーに参入しようと計画した場合、すでに実績のあるブランドと提携することで、リスクを最小限に抑えることができます。

今後も、いろいろなブランド間で、「ワクワク」するようなコラボが実現すると思います。そして、多くの消費者が、そうしたコラボを待ち望んでいます。


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