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マーケティング最前線!

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「DoorDash」「サボリーノ」が正しく理解した、顧客が「片付けたい仕事」!!

2023.06.20

 あなたの今日「片付けるべき仕事」は何ですか?

多くのビジネスパーソンは、出社すると、まずパソコンを立ち上げ、「スケジュール管理」画面をチェックするでしょう。そして、今日の「やるべき仕事」「片付けるべきタスク」を確認します。

そうした個人が行う「片付けるべき仕事」(JTBD: Jobs to be done)の確認作業を、ビジネスにおいて、「顧客の根本的な欲求」を理解する手法として活用するのが、現在、話題となっている「ジョブ理論」(Theory of Jobs to Be Done、以下「JTBD」)です。 

「人はドリルが欲しいのではなく、『1/4インチの穴』が欲しいのだ」

このJTBDの考え方は、もともと、セオドア?レビット(Theodore Levitt)元ハーバード大学経営大学院教授の「人々は1/4インチのドリルを買いたいのではなく、『1/4インチの穴』が欲しいのだ」という洞察に由来しています。

レビット博士がいいたいのはこういうことです。顧客が製品を購入するとき、本質的に、「ある問題を解決する」という「仕事」を片付けるためにその製品を「雇う」のです。

 もし、その製品が「いい仕事」をすれば、次も「雇う!」

もしその製品がうまく仕事をこなせば、次に同じ仕事(問題の解決)に直面したときにも、顧客は、その製品を採用(雇用)する可能性が高くなります。もし、その製品の仕事の状態が悪ければ、顧客はその製品を「不採用」(解雇)にして、別の製品を雇用するのです。

 このように顧客が抱えている「問題」(すなわち「片付けたい仕事」)をより深く理解することで、企業は顧客のニーズを満たす新しい製品をより正確に設計し、開発することができます。

「顧客の根本的な動機?欲求」を「片付ける仕事」としてとらえる!

現在、注目が集まっている「JTBD」(「ジョブ理論」)のフレームワークは、現在の市場構造を完全に変えてしまう「破壊的イノベーション」(Disruptive Innovation)の理論を構築したハーバード大学経営大学院(HBS: Harvard Business School)のクレイトン?クリステンセン(Clayton Christensen)教授が主張した理論です。言い換えれば、購買プロセスに影響を与える「顧客の根本的な動機」を把握するための手段です。

 JTBDのフレームワークでは、「顧客は単に商品?サービスを購入しているのではなく、自分の『ある仕事(Job)』を成し遂げるためにそれらの商品?サービスを購入している(雇用している)」と考えます。

 その考えにしたがえば、朝、コンビニで、ミネラルウォーターを買うのは、「朝、水分をとる」というあなたの「片付けるべき仕事」(JTBD)を成し遂げるための行動だと理解できます。

 朝の通勤時の「ミルクシェイク」は「退屈しのぎのため」!

クリステンセン教授が取り上げた有名な事例として、ファストフード店の「ミルクシェイク」のJTBDの分析があります。彼は、ミルクシェイクを買う顧客がどんな「片付けたい仕事」を抱えているのかを調査しました。

その結果、朝の通勤時の顧客は、(クルマの)運転中の「退屈しのぎ」に、(手が汚れない)ストロー付きのミルクシェイクを買っていることがわかりました。この「退屈しのぎ」という仕事を片付けるためには、(ストローで)吸い終わるのに時間がかかるような「大きめ」「濃いめ」で、フルーツやチョコレートを入れて、食感が変わるミルクシェイクが有効な解決策になるかもしれません。

他方、夕方にミルクシェイクを買う顧客の多くは、子供と一緒の時間を長く過ごせない父親などが「『後ろめたさ』を取り除きたい」という「仕事」を抱えていることが判明しました。この場合、朝のミルクシェイクとは異なり、子供用の小さなサイズで、子供が喜ぶ味?フレイバーにするなどの解決策が考えられます。

クリステンセン教授は、時間、状況に応じて、顧客の「片付けたい仕事」(JTBD)の内容が異なるため、それに合わせた解決策、つまり、商品/サービスを提供することが大切であることを強調します。

「ジョブ」という考え方はとても「アメリカ的!」

日本的にみると、「片付けたい仕事」といった「面倒な」発想ではなく、直接、「顧客が求めているもの、つまり、ニーズを探る」と考えれば、よりシンプルではないかという意見が出てくることでしょう。しかし、そこにはアメリカ的な社会背景があるのです。

この「JTBD」のような理論が生まれてくる背景には、アメリカ人特有の仕事(ジョブ)に対する考え方があります。アメリカ社会では、「ジョブ」(仕事)に対して「雇用」され、その仕事がなくなれば「離職」「解雇」されるという認識が一般的です。したがって、人々は「仕事の存在」を前提として、2、3年でキャリアアップを図っていくため、「労働移動」(転職)も活発になります。

 新しい仕事や課題が発生すれば、期間を定めて、それに対応するスキルを持つ人が雇用され、その仕事が完了すれば、契約が切れて解雇される。次にまた、他の企業で同種の仕事の募集があれば、応募し、同じように契約期間が区切られて、雇用される。アメリカ発祥のコンサルタント業務などはまさにこの考えにピッタリ当てはまります。

日本では「ジョブ」単位ではなく、「個人」として雇用される!

一方、日本では、仕事単位ではなく、「総合的な個人」として、長期的に企業(あるいは組織)に雇用される傾向がいまでも強いといえます。

したがって、日本のビジネスパーソンには、「企業ではなく仕事で雇用される」というアメリカ的な考え方はなじみにくいのかもしれません。

 このように、JTBD理論は、米国流の「仕事」観を前提として組み立てられているので、顧客のニーズを「仕事を片付ける」という視点で追求するという発想も、アメリカ人には「腑に落ちる」、つまり自然に受け入れられるのです。逆に、日本的な視点でいうと、「違和感が残る」のです。

 ミネラルウォーターを購入して、「水分をとる」仕事を片付ける!

「朝、水分をとる」という、あなたの仕事を片付けるにあたって、ミネラルウォーターやコーヒーを飲む、緑茶飲料を買うという選択肢もあります。逆にいえば、「朝、水分をとる」という個人の仕事が存在すること(つまり、顧客の欲求)を理解できれば、企業は、それに関して、多様な商品?サービスの選択肢を提案できます。

 別の表現を使えば、「JTBD」を、「顧客が達成しようとしている目標」と定義することもできます。

  JTBDの視点で、商品提案の視野が広がる!

JTBDの視点を組織に導入すると、次のような発想や組織運営の転換につながります。すなわち、伝統的なカテゴリー(マーケティング、製品開発、販売など)を中心に組織化するのではなく、企業は、「やるべき仕事」(JTBD)を中心とした製品やサービスを提供するために組織を構築したほうがよい、という考えが生まれてきます。

 たとえば、「健康的に日常を過ごしたい」という個人の「仕事」を解決するために、ある食品メーカーが何かを提案するとしましょう。その場合、「健康ソリューション部」という組織を立ち上げ、栄養?健康ドリンク、サプリメント、ダイエット食品、スポーツジム、ダンスレッスン、ヒーリンググッズ、音楽、健康管理アプリなど、広範囲の商品新皇冠体育が想定できるようになります。

 同時に、そういた商品?サービスの開発を、縦割り組織ではなく、統合的に検討することが可能になります。それによって、縦割り思考では捉えきれなかったビジネスチャンスが見えてくる可能性が高まります。

 全米第1位のシェア「ドアダッシュ」の「食品デリバリー」サービス

「ハーバード?ビジネス?レビュー」(HBR)誌が、フードデリバリーサービスの「ドアダッシュ」(DoorDash)をJTBDの好例として取り上げています。「dash」とは、「突進する」「ダッシュする」という意味です。

 ドアダッシュ社(2013年設立)は、オンライン食品注文と(非接触型の)食品配達のプラットフォーム(技術基盤)を運営しています。カリフォルニア州サンフランシスコを拠点にしていて、2020年12月にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しました。同社の業績は、新型コロナ感染拡大を受け、急成長し、現在の企業価値は3兆円に達しています。

 2023年2月の時点で、ドアダッシュ(傘下の同業「キャビア」社(Caviar)を含む)は、米国消費者の食事デリバリー売上の65%を占めています。第2位は、ウーバーイーツ(Uber Eats)で23%のシェアです。

 米国の場合、ドアダッシュの配達員(呼称「ダッシャー」(Dasher))は18歳以上で、自動車で配達するのが基本となっています。その点が、ウーバーイーツ(Uber Eats)との違いのようです。

 まず、ドアダッシュは、顧客が「安全にかつ便利に食品を調達する」という仕事を片付けたいと思っていることを正確に理解している。次に、その顧客のために、「安全で便利に、食品を届ける」という解決策を提示して、「雇って」もらうことに成功している、と解釈できます。

 「サボリーノ 目ざまシート」が「時短で、ラクして美容」の仕事を解決!

日本にも、JTBDの好例があります。それが、フェイスマスク「サボリーノ 目ざまシート」(スタイリングライフ?ホールディングス BCLカンパニー)です。

現代人が抱える「毎日の美容で、(特に朝の)時間を節約し、かつラクしてキレイになりたい」という仕事。それを解決するために、「雇われた」オールインワン型のフェイスマスクです。

 「サボリーノ」は「時短美容」のために、すべての「面倒くささ」(「片付けたい仕事」)を解消しました。「女性って、毎朝忙しいよね?」「一番面倒くさいのが朝の洗顔!」「洗顔、スキンケア、下地まで一気にいけるオールインワンがあればいい!」「マスクを広げるのが面倒なので、両手で引き出すと顔型がそのまま出るのがいい!」

 その結果、この商品は、多くの消費者に支持され(「雇われて」)、2015年の発売以来、メーカー出荷枚数はシリーズ累計7億枚(2022年7月時点)を突破しています。現在の日本の人口が、1.25億人ですので、その売上の大きさが理解できます。

?では、JTBDの教訓をまとめておきましょう。自分も含めて、友人、知人や同世代の人々が「今、この仕事を片付けたい!」「これ、面倒くさいな?」と思っていることは何か?まずそこから突き詰めていくと、新しい企画のヒントにつながるのではないか、と思います。


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