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マーケティング最前線!

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(第2回) スタバ「パンプキン スパイス ラテ」! 「思い出」にリンクさせる「ノスタルジア?マーケティング」

2023.04.13

「思い出」を活用したノスタルジア?マーケティング

ハッピーな「思い出」にアピールするノスタルジア?マーケティング

このY2Kファッションの人気は、ビジネス的にみれば、「ノスタルジア?マーケティング」に分類されます。ノスタルジア?マーケティングとは、数十年前の過去に流行したポジティブで親しみのあるコンセプトやモノを利用し、今現在の新しいアイデアや商品などにリンクさせて信頼を築き、広告?宣伝や販売促進を活性化させる戦略です。もっとわかりやすくいえば、顧客がすでに好きなもの、思い出のあるものを、商品?サービスに関連付ける手法です。

なぜ今、このノスタルジア?マーケティングに注目が集まっているのでしょうか?第1に、先ほども述べたとおり、新型コロナ感染拡大による「閉塞感」「圧迫感」のなかで、人々は数十年前の良い思い出や、若かったころに楽しんだエンターテインメントに一種の救いを求めるようになりました。アメリカにおいて、半数以上の消費者が、若い頃に見た古いテレビ番組や映画、歌に安らぎを見出しているという調査結果もあります。

 ノスタルジーには不安を和らげる効果がある!

第2に、上記1にも関連しますが、ノスタルジーには、退屈、孤独、不安を和らげる効果があることが研究で明らかにされています。さらに、ノスタルジーは人生の転機やストレスに対処するための効果的な方法になるという研究結果もあるようです。要するに、不安な時や不確実な状況に、人は「ノスタルジー」(懐かしさ)を感じることで安らぎを得るのです。

ノスタルジーは、香り、歌、味、視覚などの感覚的な刺激によって引き起こされることが多いとされます。さらに、会話、記憶、回想、類似の経験もノスタルジーを触発するようです。

ノスタルジア?マーケティングによって呼び起こされた消費者のポジティブな感情が、ブランド、商品やサービスに関連づけられ、消費者の信頼感が高まるという効果が期待できるのです。

ターゲットの顧客層と文化的な記憶を明確化!

では、ノスタルジア?マーケティングで留意すべきことを簡単に整理しておきましょう。

 第1に、ターゲットにする顧客層を明確にし、その属性、考え方、行動様式を理解することが大切になります。たとえば、年代やどのような時代を生きてきたかを確認する作業がこれに当たります。仮に、年齢層が分かれている場合は、年齢層別に異なるマーケティング戦略を組み立てることが有効となります。

 第2に、対象が明確になったら、その対象の文化的記憶を確認する作業に入ります。過去の出来事、考え方、人物、モノ?サービスなど、ターゲットとなる顧客層の心に最も響く可能性のあるものを洗い出すのです。たとえば、テレビ番組、映画、音楽、ファッション、ゲーム、おもちゃ、食べ物などが対象としてあぶりだされることでしょう。

 第3として、自社のブランド、商品?サービス、事業の歴史などを、人々?顧客の文化的な記憶に重ねる作業が必要となります。Y2Kファッションでいえば、2000年代がどのような時代で、何が流行ったか。そうしたものが、人々の間に文化として記憶されていますので、その中に自社の商品/サービスを位置付けるのです。「たまごっち」(バンダイ)など自社の過去の商品?サービス自体が、人々の文化的な記憶の一部になっているケースも少なくありません。

 人は「経験したポジティブな感情」を共有したくなる!

第4に、さらに、ノスタルジーを引き起こす要素に、新しい要素をくわえて、現代性をアピールすることも大切です。そうすれば、「古くさい」という印象を取り除き、懐かしさと新規性の両要素を兼ね備えた商品?サービスとして訴求力を持つことができます。

 第5に、ソーシャルメディア(SNS)を活用することも重要となります。ノスタルジア?マーケティングを体験すると、人々は、経験したポジティブな感情や思い出を、他人と共有したいという思いに駆られるからです。たとえば、ノスタルジア?マーケティング用のハッシュタグを考案して、画像?動画投稿などの期間限定キャンペーンを実施し、顧客を巻き込む手法を活用すればブランドイメージや信頼感の向上にもつながるでしょう。

 ノスタルジーを感じさせる「バーガキング」の新しいロゴ

ここで、アメリカにおけるノスタルジア?マーケティングの事例として、「バーガーキング」と「スターバックス」を紹介しましょう。

 2021年、「バーガーキング」(Burger King)がブランドのロゴを変更しました。その変更したロゴは、1990年代(1994年から1999年)に使用していたロゴによく似ています。

 このロゴの変更には、米国で1980年から1995年の間に生まれた、現在20代後半から40歳ぐらいになる「ミレニアル世代」(Millennials)を主要な顧客層とするノスタルジア?マーケティングであるという分析があります。新しいブランドロゴにより「昔のいい時代」を思い出してもらえれば、そうした世代とバーガーキングとのつながりがさらに強固になるからです。

  スタバ「パンプキン スパイス ラテ」もアメリカ人の郷愁を誘う!

2003年、米国の「スターバックス」(Starbucks)は、有名な「パンプキン スパイス ラテ」(Pumpkin Spice Latte)を一部の店舗で初めて発売しました。

アメリカ社会にとって、パンプキン(カボチャ)は特別な意味を持っているといわれています。アメリカの農家がパンプキンを家畜飼料の主食として使っていた歴史から、アメリカ人が農業地帯から都市に移り住むにつれ、パンプキンが象徴する農家の暮らしへのノスタルジーが高まったと説明されます。

 そもそも、パンプキン?スパイスとは、シナモン、ナツメグ、ジンジャー、クローブなどがブレンドされた、いわゆる「パンプキンパイ」のような香り?風味を出すための調味料です。アメリカでレシピにパンプキン?スパイスが登場したのは1930年代にさかのぼり、このスパイスはそうした時代の郷愁を引き起こすという解説もあります。

さらに、ハロウィンや感謝祭の想い出に強く紐づけられているパンプキンは、「秋のイベント」のイメージとして、アメリカ人のノスタルジーを触発するともいわれています。

 米国で累計6億杯以上の「パンプキン スパイス ラテ」が売れている!

米国スターバックス社によると、2003年の発売から米国で累計6億杯以上の「パンプキン スパイス ラテ」を販売し、2019年から販売している「パンプキン クリーム コールド ブリュー」(Pumpkin Cream Cold Brew)は累計1億杯売れているそうです。現在のアメリカの人口が3.3億人ですので、その売上規模の大きさが容易に理解できます。

 日本でもアメリカンレトロ『スターバックス コーラ フラペチーノ』!

そして、日本法人「スターバックス コーヒー ジャパン」もノスタルジア?マーケティングを利用した販売キャンペーンを実施しています。キャッチフレーズは「レトロアメリカンにインスパイアされたポップな世界観を楽しむ!」。2023年3月15日から『スターバックス コーラ フラペチーノ』が発売されました。

 コーラといっても炭酸は使っていません。シナモン、クローブ、コリアンダーなどのスパイス風味とライム風味を組み合わせた同社オリジナルのコーラ味のフラペチーノです。そこに、バニラ風味のホイップクリームをトッピング。このホイップクリームはエスプレッソでコーヒーの香りとコクが加えられています。

 SNS上で、すでに飲んだ人の「コーラフロートが好きな人なら一度飲んでみてほしい新作フラぺ!」といった好意的なレビューを発見しました。このレビューのとおり、昔飲んだ、なつかしい「コーラフロート」を思い出すのでしょう。

?このように、Y2Kファッションの流行やスターバックスの例をみても、ノスタルジア?マーケティングの効果は決してあなどれない、といえます。


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